BDF製造副生成物の添加が牛ふん尿堆肥化に及ぼす影響


[要約]
乳牛のふん尿の堆肥化時にバイオディーゼル燃料(以下BDFとする)製造副生成物を5%程度添加することにより、堆肥化初期温度の立ち上がりが早くかつ高くなり発酵期間が短縮される。また、連続的に添加する場合も、堆肥化物の5%重量以内で適宜水分補充をすれば毎週添加しても発酵が継続される。

[キーワード]牛ふん堆肥化、発酵促進、BDF製造副生成物、グリセリン

[担当]千葉畜総研・生産環境部・環境保全研究室、(株)千葉三港運輸
[代表連絡先]電話:043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  廃食油等を活用したバイオディーゼル燃料製造が実用化されているが、製造時に発生するグリセリンを40%程度含む粘凋性の高い液体の副生成物の処理が問題となっている。一方、家畜ふんの中でも乳牛ふんは堆肥化中に分解される有機物含量が少なく発酵熱が上がりにくく「廃白土」等を利用した堆肥化が行われている。そこで、BDF製造副生成物を乳牛ふん堆肥に添加することで堆肥化過程における熱源利用による発酵促進効果とBDF製造副生成物そのものの処理効果について検討する。

[成果の内容・特徴]
  今回用いたBDF製造副生成物は、県内S社が製造したもので、グリセリン41%、有機性不純物48%、メタノール10.2%、アルカリ分3.5%を含む黒色の粘凋な液体である。
1. 水分70%以下に調製した搾乳牛ふん尿の堆肥化時にBDF製造副生成物を5%程度添加することで、堆肥化初期の温度の立ち上がりが早くかつ高くなり(図1)水分蒸散が促進されて、堆肥の乾物割合が高くなるとともに堆肥化の一次発酵期間が短縮される。
2. 灰分含量から推定した有機物の分解率は添加区が5〜15%高く推移し、堆肥化初期からBDF製造副生成物由来有機物の分解が促進される(図2)。また、堆肥中のADF分解率で見ると堆肥化初期においてふん由来の繊維成分の分解も促進される(図3)。
3. 図1に示す60日間処理した堆肥ではBDF製造副生成物の添加水準に比例してEC、pHとも上昇したが、作物(飼料用トウモロコシ)発芽試験では2.5%添加までは発芽率に差はみられない。ただし、5%添加ではやや発芽阻害が見られる(表1)。
4. BDF製造副生成物の添加上限を知るため、堆肥化の適正通気量を基準に通気抵抗を測定したところ、牛ふん堆肥とBDF副生成物を合わせた液体割合が68%以下になるような添加割合(水分65〜68%の牛ふんに重量比で3〜6%添加する)が通気性の確保と堆肥化促進の指標となる。
5. BDF製造副生成物を家畜ふん堆肥(牛ふん主体)に連続的(毎週区と隔週区でそれぞれ5%と10%を添加)に混合して分解処理する場合は、堆肥化物の5%重量以内で適宜水分補充(堆肥化物の水分を40〜45%に維持)をしていけば、毎週添加しても発酵が継続され、副生成物中のグリセリンや脂肪は分解される(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 酪農家の直線連続攪拌式ハウス乾燥施設で乾燥条件の悪い冬季に、牛ふんにBDF製造副生成物を添加することで、無添加時に比べて発酵温度の上昇や水分蒸散の効率が向上し、堆肥化処理をより迅速かつ良好に行うことができる。
2. BDF製造副生成物には製造時に触媒として使われたアルカリ(NaOH換算で3.5%)が含まれているため、安全性の確保について留意することと出来た堆肥の同一圃場への多量長期間連用による土壌のアルカリ化について留意する必要がある。


[具体的データ]

図1 BDF副生成物添加牛ふん堆肥の平均温度
図2 有機物分解率の推移 図3 ADF分解率の推移
表1 飼料用トウモロコシの発芽試験の結果
図4 BDF副生成物連続添加時の堆肥温度

[その他]
研究課題名:バイオディーゼル燃料(BDF)副生成物利用による家畜ふん尿堆肥化技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:石崎重信、岡崎好子
発表論文等:石崎・岡崎(2006)千葉畜総研 研究報告 6:45−54

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