乳牛ふんの減圧乾燥処理によるふん中雑草種子を不活化する方法


[要約]
牛ふんの堆肥化における前処理法である減圧乾燥処理は、牛ふんの水分調整と、牛ふん中の雑草種子の不活化を同時に行うことができる。雑草種子の不活化は、水分87%の乳牛ふんを70%まで乾燥させる処理で十分であり、このときの減圧処理中のタンク内温度は65〜70℃、処理時間は3時間である。

[キーワード]強害雑草、減圧乾燥、乳牛ふん

[担当]静岡畜試・環境飼料部
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 飼料に混入した外来雑草の種子が、不十分な処理をした牛ふんを通じて農地を汚染することが問題となっている。これは牛ふんの堆肥化過程で品温の上昇が不十分あるいは不均一であったため、牛ふん中の雑草種子が不活化されなかったことによる。
   一方、乳牛ふんなどの含水率が高い有機物の乾燥方法として利用される減圧乾燥処理は、処理過程で雑草種子の不活化に必要な60〜70℃の温度条件を一定時間保持できる。
  そこで、堆肥化のための水分調整と雑草種子の不活化を同時に行うための乳牛ふんの減圧乾燥処理に必要な処理条件を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試した減圧乾燥機(TDS−2V:東芝機械製)は、タンク容量0.35m3、蒸気ボイラーを熱源としてタンク内部を加熱しながら、内容物をパドルで攪拌する構造である。
2. 水分87.4%の乳牛ふん0.15m3と、ナイロンメッシュバックに入れた9種類の雑草および牧草の種子を減圧乾燥機に入れ、真空ポンプにより約0.07MPaに減圧しながらタンク内部を加熱する。このとき、加熱開始後30分以降のタンク内の品温は65〜70℃で推移し、牛ふんを水分70%まで乾燥させるのに要する時間は180分である(図1)。
3. 減圧乾燥処理した雑草および牧草種子を、無処理を対照として雑草科学実験法(日本雑草学会2001)に準じた条件で、種子数25粒、3回の繰り返しで発芽させたところ、対照区の発芽率39〜93%に比べ、減圧乾燥処理した雑草および牧草は全く発芽しない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛ふんの減圧乾燥処理により、堆肥化の水分調整と雑草種子の不活化を同時に行うことが可能である。
2. 減圧乾燥機の容量や型式が異なる場合は、減圧乾燥処理中に十分な処理温度と処理時間が確保できているか確認する必要がある。
3. 減圧乾燥機を乳牛ふんの水分調整として利用した場合、搾乳牛50頭規模における年間の処理経費は5,959千円(減圧乾燥機と堆肥舎の減価償却費及び労賃を含む)である。


[具体的データ]

図1 乳牛ふんを減圧乾燥処理した場合の減圧乾燥機タンク内温度と水分の推移
表1 減圧乾燥処理による雑草および牧草種子の発芽率の変化

[その他]
研究課題名:有機性廃棄物ゼロエミッションを目指した堆肥生産利用方式の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:芹澤駿治、片山信也、佐藤克昭、望月建治

目次へ戻る