超臨界水中燃焼技術による家畜ふん尿処理


[要約]
余剰ふんの減量化、エネルギー化を図るため、超臨界水中燃焼法による豚ふんの完全燃焼試験を実施し、至適燃焼条件を検討した。より実用的な規模での燃焼については異物混入の防止、灰分の連続的な除去等装置面の改良が今後の課題である。

[キーワード]超臨界水中燃焼、ふん減量化、エネルギー回収

[担当]静岡中小試・経営環境スタッフ
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  「家畜排せつ物法」の完全施行後、野積み・素堀りはほぼ解消し、たい肥の流通促進が図られているが、季節的に耕地でたい肥を必要としない時期はふん尿が過剰、滞留することから家畜ふんの減量化技術が求められる。そこで、超臨界状態下にて余剰ふんを燃焼処理し、燃焼熱からのエネルギー回収を目的として最適な燃焼条件を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 内容積16Lで連続的に豚ふんの燃焼ができる流通式超臨界水中用ベンチプラント(図1)を製作する。
2. 含水率80wt%に調整した豚ふんを0.6L/hourの速度により注入し、温度653℃、圧力15MPa、酸素供給比1.2、無触媒条件にて15時間の燃焼試験を実施した。その結果、燃焼後の廃液のTOC(全有機炭素量)は2.0ppm以下で、炭素の燃焼率はほぼ100%である。(図2)
3. 投入豚ふんのほとんどの窒素分は気化し、15時間燃焼試験時の廃水中の窒素分濃度は60ppm以下で、燃焼15時間めには40ppm以下まで低下する。(図3)
4. 家畜ふん1トン(含水率80wt%)を超臨界水中燃焼する場合の必要エネルギーは4.2×106kJ、燃焼により得られる発生エネルギーは7.1×106kJであることから、2.9×106kJ(約7.0×105 kcal)の熱エネルギーが回収できると試算される。

[成果の活用面・留意点]
1. 超臨界水中燃焼による豚ふんの完全分解の温度条件としては温度650℃以上で安定した分解が確認できる。廃液中の窒素分濃度も水質汚濁防止法の規制値以下にすることができる。
2. 今後、より実用的な量の燃焼については、家畜ふんに混入する可能性のある異物の除去、燃焼による灰分の連続的な除去、触媒の利用など装置面での改良が必要となる。
3. 食品残渣等と家畜ふんを混合燃焼する場合、含水率・元素組成が異なってくることから最適な酸素供給条件を検討する必要がある。
4. 装置の規模により、圧力容器取扱作業主任者等の管理下で実験を行う必要がある。


[具体的データ]

図1 ベンチプラントの概要図 図2 炭素の燃料率、TOC の経時的変化
図3 燃焼廃液の窒素分の経時的変化  

[その他]
研究課題名:超臨界水中燃焼法による家畜排せつ物からの熱エネルギー回収技術
予算区分:国庫
研究期間:2003-2005年度
研究担当者:杉山  典、関  哲夫、大谷利之、和久田  高志、佐古  猛(静岡大学)

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