ブルーベリーにおける防虫網を用いたオウトウショウジョウバエの物理的防除


[要約]
ブルーベリー園を目合い0.98mmの網で被覆すると、オウトウショウジョウバエの被害を完全に防止できる。網の被覆は、ブルーベリーの樹体、生産性及び果実品質に影響を及ぼさない。

[キーワード]ブルーベリー、オウトウショウジョウバエ、防虫網、物理的防除

[担当]千葉農総研セ・生産技術部・果樹研究室、生産工学研究室、生産環境部・応用昆虫研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9989
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  ブルーベリーの栽培面積と生産量は各地で急増している。しかし、近年、全国的にオウトウショウジョウバエによるブルーベリー果実の被害が問題となっている。そこで、防虫網を用いたオウトウショウジョウバエの物理的防除技術について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 0.98mm目合いの防虫網でブルーベリー園を被覆すると、果実からはオウトウショウジョウバエの幼虫が発見されず、被害を完全に防止できる(表1)。
2. 防虫網内の温湿度は、防鳥網内と変わらないが(データ略)、相対照度は10〜20%減少する(表2)。
3. 防虫網を被覆したブルーベリーの収穫期は、30mm目合いの防鳥網を被覆したものより収穫終わりが遅くなり収穫期間が長くなる(表3)。
4. 防虫網を被覆したブルーベリーの平均果重や収穫量及び新梢の生育は、防鳥網を被覆したものと同程度である(表3)。
5. 防虫網を被覆したブルーベリー果実の糖度、遊離糖含量、滴定酸量、アントシアニン含有量比及び食味評価は、防鳥網を被覆したものと同程度である(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 防虫網は、園に棚やパイプハウスを設置して被覆する。防虫網は強い風圧を受けやすいので、設置に当たっては防風施設の整備や既存の棚の補強が必要である。
2. 防虫網は収穫1か月前に被覆し、収穫終了後は速やかに除去する。
3. 防虫網内の防鳥網内に対する相対照度は年々低下する傾向があるため、防虫網を長年使用すると果実のアントシアニン含有量が低下する恐れがある。
4. 防虫網は透光率の優れたものを使用する。なお、本試験に用いた防虫網の価格(2m間隔にロープを入れる加工済み)は、1平方メートル当たり270円である。


[具体的データ]

表1 果実の水没処理による幼虫の脱出数(木更津市,2003〜2005年の合計)
表2 相対照度の推移(木更津市)
表3 防虫網被覆が収穫期、平均果重、収穫量及び新梢の生育に及ぼす影響(農総研パイプハウス,2005年)
表4 防虫網被覆が果実品質に及ぼす影響(農総研パイプハウス,2005年)

[その他]
研究課題名:オウトウショウジョウバエの耕種的防除技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:川瀬信三、内野 憲、本居聡子、家壽多正樹
発表論文等:川瀬・内野(2005)関東病虫研報 52:99-101

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