ハウスミカンの点滴かん水同時施肥栽培法


[要約]
ハウスミカンは、点滴かん水同時施肥(養液土耕)栽培を行うことで、年間窒素施用量の約3割が削減できる。また、収穫期まで毎日少量のかん水を行うことで、果実品質が低下することなく、収量が2〜3割程度増加する。

[キーワード]ハウスミカン、施肥法、かん水同時施肥、葉内成分、収量、果実品質

[担当]愛知農総試・園芸研究部・常緑果樹グループ
[代表連絡先]電話:0533-68-3381
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  本県のハウスミカンは、導入から30年以上が経過し、樹勢低下による収量減が深刻な問題となっている。そこで、効率的な施肥、かん水が可能なかん水同時施肥栽培(養液土耕栽培)を用い、高品質果実生産を維持しつつ収量の増加を図る。また、施肥量の削減による環境保全効果も期待できる。

[成果の内容・特徴]
1. 施肥及びかん水には、孔間隔20cmの圧力調整機能付き硬質点滴チューブを用いる。成木園では、チューブを畝当たり3本、約60cm間隔で直線状に配置する。液肥はハウス内の貯水タンクにてEC値を調整した後、ポンプで加圧してチューブへ導水する。
2. 施肥は2回に分けて行う。夏芽を結果母枝とした作型の場合、せん定から完全緑化の直前までの期間は、EC=0.8mS/cmに調整した養液を毎日3mm、かん水と同時に施用する。加温後は、加温開始から一次生理落果期まで、EC=0.5mS/cmの養液を毎日3mm、かん水と同時に施用し、以降は水のみのかん水とする。(表1図1)。
3. かん水量は、せん定後から60日間と加温開始から100日間は毎日3mm、以降、収穫までは毎日0.3mmとする(図1)。
4. 本システムを用いた場合、年間窒素施用量の33%を4年間削減しても、葉内窒素含有量は慣行施肥体系の場合とほぼ同様に推移し、また、果実品質にも影響が見られないため、施肥量の削減が可能となる(表2)。
5. 収量は、慣行の栽培方法に比べ、2〜3割程度増加する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 適正な施肥量及びかん水量は、樹齢や園地条件等により異なるため、慣行栽培での管理や土壌分析値等を参考に設定する必要がある。
2. 加温開始時やせん定直後には十分なかん水が必要であるため、既設のかん水設備との併用が望ましい。
3. 本試験は夏芽を結果母枝とした作型で行ったが、春芽を母枝とした作型にも適応可能である。
4. 試験に用いたシステムの導入コストは、チューブ、タンク、フィルタ、ポンプ、EC調整器等で10アール当たり約90万円必要である。水源である農業用水の圧力が安定確保できるほ場においては、ポンプが不要で、EC調整器に代わり安価な液肥混入器が使用できるため、導入コストは約40万円となる。


[具体的データ]

表1 点滴かん水同時施肥栽培における施肥方法
図1 点滴かん水同時施肥栽培における時期別かん水量と施肥時期
表2 点滴かん水同時施肥栽培における葉内成分含有率、果実品質及び収量

[その他]
研究課題名:ハウスミカンの効率的施肥法の検討
予算区分:県単
研究期間:2001〜2006年度
研究担当者:杉原巧祐、本美善央

目次へ戻る