山梨県の果樹における気候温暖化の影響と将来予測


[要約]
1990年代以降、気候温暖化による高温が原因と思われる果樹の生育障害の発生が多い。過去の気象推移から算出した気温上昇値をもとに、30年後の温度環境をシミュレーションすると、施設果樹での加温時期の遅れや夏期の高温障害が問題になる。

[キーワード]気候温暖化、生育障害、シミュレーション、施設栽培、高温

[担当]山梨果樹試
[代表連絡先]電話:0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  地球規模で温暖化による気候変動が問題になる中、果樹産地においても温暖化の影響を予測し、必要な対策を講じる必要がある。そこで、近年の気候が果樹の生産に及ぼした影響を検証するとともに、今後の気候変化が果樹産地の温度環境に及ぼす影響を予測し、対策に向けた基礎資料を得る。

[成果の内容・特徴]
1. 1970〜80年代に多かった低温による生育障害の事例は、1990年代には減少している。一方、1990年代以降は高温・干ばつが原因と思われるモモの小玉果や過熟果の発生、ブドウの肥大や着色不良の発生が多く、気候温暖化の影響がうかがえる(表1)。
2. 過去の気温推移をもとにした30年後の気温上昇値(*)と平年値を用いて、施設栽培の加温の目安となる7.2℃以下の低温遭遇積算時間の推移を比較すると、ブドウ、モモ、オウトウなどの加温開始時期は7〜10日遅れ、出荷時期の遅延が予想される(図1)。
3. 夏期には、30℃以上の高温となる時間帯が倍増するため、ブドウの着色不良など高温による障害の発生が懸念される(図2)。
    * 既報「山梨県における将来の温度上昇予測とメッシュ地図の作成」の月別の平均、最高、最低気温の上昇値による。

[成果の活用面・留意点]
1. 気候温暖化による果樹の生育予測のための基礎資料として活用する。
2. 果樹以外の作物でも温暖化の影響を明らかにするための基礎資料となる。
3. 甲府地方気象台の気象推移をもとに暫定的に求めた温度上昇値であり、都市化の影響や他に公表されている気候変動の予測値は考慮していない。他の予測情報を用いても同様な手法で生育環境を予測できる。


[具体的データ]

表1 高温(低温)による生育障害の報告事例(1976〜2005)
図1 気温上昇による7.2℃以下の積算時間の変化と施設果樹の加温に及ぼす影響
図2 気温上昇が気温30℃以上の高温経過時間に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:温暖化による気象変動が果樹の生育・成熟等に及ぼす影響予測
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:齊藤典義、猪股雅人、富田晃、村上芳照、手塚誉裕

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