屋根および壁面の緑化が室内環境に与える影響


[要約]
屋根および壁面といった建築物上の緑化には、室内の熱環境を改善し、冷房器具の消費電力量を抑制する効果がある。また、屋根と壁面の緑化で効果が高い。

[キーワード]壁面緑化、屋根緑化、環境緩和

[担当]東京農総研・都市環境科・植木研究室
[代表連絡先]電話:042-528-0526
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  屋上・壁面緑化は、ヒートアイランド現象の軽減に寄与することから、近年大きく注目されている。本研究では、屋根および壁面緑化による建物内温度の低減効果を環境計測によって評価するとともに、緑化方法の違いが室内環境、冷房機器の消費電力量に与える影響について検討し、建物緑化技術の発展・普及に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 本試験は、千葉県農業総合研究センター内の木造簡易住宅3棟を用いて実施した(表1図1)。
2. 室内の温度(乾球温度)は、空調のない場合、屋上+壁面の緑化条件で最も低くなる。(図2)。
3. 1日当たりの電力消費量は対照区が最も高い結果となる。屋根区は約13%、屋根+壁区については約32%の省エネルギー効果が確認される(図3)。
4. 低減値(同じ時刻における対照室内温度から各処理区の室内温度を除した値)は外気温と高い相関関係にある。また、屋根区よりも屋根+壁区の低減値が高い。WBGTは屋根+壁区で相関関係がみられるが、屋根区では相関関係がみられない(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 屋根+壁区の壁面は、L=250cmのつる植物(ヘデラ・カナリエンシス、アメリカノウゼンカズラ、ヘデラ・ヘリックス、クレマチス等9種)で緑化した。壁面4面の平均緑被率(植物の茎葉によって建物壁面が被覆される割合)は57.9%であった。
2. 断熱や省エネルギー効果は、施設の条件や気象条件等に大きく影響を受ける。
3. ヒートアイランド対策技術、壁面緑化の推進資料として活用できる。


[具体的データ]

表1 計測期間中の千葉県千葉市の気象概要*
図1 試験の概要
図2 室温(乾球温度)の日変化 図3 一日平均消費電力量
図4 室内環境緩和効果*WBGT(湿球黒球温度:熱中症事故の予防を目的にした暑熱指標)

[その他]
研究課題名:都市空間、特に屋上・壁面緑化に向けた軽量・薄層基盤植物の開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:渋谷圭助、田旗裕也、橋本智明、柴田忠裕(千葉農総研)

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