四季成り性イチゴ新品種「かいサマー」の育成


[要約]
「かいサマー」は、「章姫」に「エラン」を交雑して育成した四季成り性イチゴ品種である。果実の形状や食味に優れ、盛夏期にも収量が落ち込むことなく7〜10月に安定収穫可能で、山梨県の高冷地における夏秋どり栽培に適する。

[キーワード]イチゴ、夏秋どり、四季成り性、安定収穫、良食味

[担当]山梨総農セ・高冷地分場・野菜作物科
[代表連絡先]電話:0551-20-2050
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  山梨県の夏秋どりイチゴの栽培品種は、「エラン」が大半を占めている。「エラン」は盛夏期にも連続して収穫が可能な品種であるが、酸味が強いという欠点がある。また、これまでに山梨県が育成したイチゴの品種はなく、品質の優れたオリジナル品種の育成が強く望まれている。これらのことから、盛夏期にも連続収穫可能で良食味な四季成り性品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 育成経過
  2001年に「章姫」を子房親、「エラン」を花粉親として交配した。得られた実生個体の中から四季成り性が安定し果実品質が良好な1系統を選抜し、2005年に「イチゴ山梨1号」の系統名を付し、2006年に「かいサマー」と命名した。
2. 「かいサマー」の特性
1)  草姿は立性、草勢は強である。ランナー発生数は「エラン」と同等である(表1)。
2)  「エラン」よりも上物率が高いため多収である。果房出蕾の連続性が強いため、月別収量の変動が少なく、収量が安定している。果実の大きさは平均8.3gで、「エラン」と同等である(表2)。
3)  果形は長円錐、果皮色は濃紅色、果実の空洞はかなり小である。また、そう果の落ち込みが小さいため、「エラン」より種浮き果の発生が少ない(図1表3)。
4)  収穫期間を通して、「エラン」よりも糖度が高く、酸度が低いため、糖酸比が高い。また、食味は非常に良好である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は、標高700m以上の夏季冷涼な地域である。
2. 果房の発生が旺盛で着果負担になりやすいため、1果房当たり5〜7果に摘果する。
3. 「エラン」と異なりランナーで増殖を行うが、定植後の栽培管理は「エラン」に準ずる。
4. 許諾元は山梨県であり、当面山梨県内での普及を行う。


[具体的データ]

図1 「かいサマー」の果実
表1 生育特性z  
表2 収量z(2005年〜2006年の平均)  
表3 果実特性z  

[その他]
研究課題名:夏秋どりイチゴの良品・安定生産
予算区分:県単
研究期間:2000〜2006年度
研究担当者:窪田哲、平林正光、木下耕一、石川寛人、赤池一彦、窪川茂、加藤成二
発表論文等:出願公表(平成18年11月17日)−出願番号第19946号

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