高ビタミンC・萎黄病・黒腐病抵抗性キャベツ新品種「YRSE2号」の育成


[要約]
キャベツ萎黄病・黒腐病に抵抗性を有し、高温期に安定した結球性を示すキャベツ品種「YRSE2号」を育成した。「YRSE2号」は長野県内に広く作付けされている品種に比べ、ビタミンC含量が多い。また県内の8月収穫する作期において適応性を示す。

[キーワード]キャベツ、ビタミンC、キャベツ黒腐病、キャベツ萎黄病

[担当]長野野花試・育種部、野菜部
[代表連絡先]電話:026-278-6848
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 長野県では、キャベツ萎黄病に抵抗性を有する「YRSE」が良好な食味を有する品種として7〜8月収穫となる作期に作付けされている。しかし、キャベツ黒腐病に弱く8月収穫において球高が高くなる品質低下が問題となっている。そこでキャベツ黒腐病抵抗性を改善し、「YRSE」と同等な良食味を有し、8月収穫において商品性の優れたF1品種の育成を目指す。

[成果の内容・特徴]
1. 育成経過
  「YRSE2号」は、子房親を「YRSE」の♀親系統、花粉親をF1品種「若峰」((株)タキイ種苗)の自殖後代系統とするF1品種である。
2. 品種特性
 
1)  「YRSE2号」は、長野県内で広く作付けされている慣行品種に比べ、ビタミンC含量が高い(表1)。
2)  キャベツ黒腐病抵抗性は「YRSE」に比べ優れる。キャベツ萎黄病に対しては真性抵抗性を有する(表2)。
3)  8月収穫において「YRSE2号」は「YRSE」に比べ球形比が小さく出荷品質面で優れた球性状を示す(表3)。
4)  官能検査(スライサーによる千切り状態における生食)による食味評価では、「YRSE2号」は「YRSE」と同等で、「若峰」より優れる(データ省略)。
5)  「YRSE2号」の形態的特性は 、「YRSE」と同等な草勢で、やや開いた草姿である。葉色は「YRSE」より濃く、「若峰」より淡い(図1)。
6)  「YRSE2号」の生態的特性は「YRSE2号」は「YRSE」に比較して葉長が長く、外葉重に対する調整球重の割合(球重率)が小さい。熟期は「YRSE」と同等(中生)である。

[成果の活用面・留意点]
1. 定植以降少雨状態が続くと球は小玉化するので、かん水施設がある圃場では結球初期までに必要量をかん水する。
2. キャベツ黒腐病抵抗性は中程度であるので、長雨の場合は殺菌剤による防除回数を増やす。
3. 種子配布は社団法人長野県原種センターにて行うが、当面は長野県内での普及を行う。


[具体的データ]

図1 キャベツ「YRSE2号」の草姿 表1 キャベツ「YRSE2号」と長野県内で栽培されている主な品種のビタミンC含有量の違い(mg/100g)
表2 キャベツ新品種「YRSE2号」の黒腐病・萎黄病抵抗性程度
表3 キャベツ新品種「YRSE2号」の収穫時の生育特性

[その他]
研究課題名:キャベツ黒腐病抵抗性品種の育成
予算区分:県単
研究期間:1995〜2006年度
研究担当者:土屋宣明、芹澤啓明、塚田元尚、臼井冨太
発表論文等:2004年3月農林水産省品種登録(登録番号第11854号)

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