夏秋トマト養液土耕栽培における土壌水分センサを用いた精密灌水制御


[要約]
土壌水分張力(pF)センサを15cmの深さに埋設して、pF値を2.1から2.8に設定し、施肥後、午前7時〜午後2時に灌水する。pF値測定を30分間隔、1回の灌水量を100〜150mL/株とすることでで、トマトの生育ステージに応じた精密灌水制御ができる。

[キーワード]夏秋トマト、養液土耕栽培、水分センサ、生育ステージ、精密灌水

[担当]愛知農総試・山間農業研究所・園芸グループ
[代表連絡先]電話:05368-2-2029
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  平成15年度研究成果情報として公表した夏秋トマト長段栽培における生育ステージ別・灌水管理指針及び栄養診断指針は、施肥と灌水を同時に実施する方式であるため、梅雨期や雨天時には必用量以上に灌水される。また、地下水位の高いほ場では土壌水分に対応した灌水が困難である。そこで、水分センサ(以後pFセンサ)を用いて土壌水分を常時測定し、トマトの生育ステージに合った灌水が必要な時間に必要量だけ自動的に灌水できる精密灌水制御技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. pF制御灌水は15cmの深さに埋設したpFセンサを用いて30分間隔で土壌水分を感知して、生育ステージに見合った灌水を制御器(少量高頻度灌水装置DIK−6650)と組み合わせて行う灌水方法である。灌水時間帯は施肥後の午前7時〜午後2時、1回の灌水量は100〜150mL/株とする。生育ステージ毎のpF値設定を図3に示す。施肥は早朝1回とし、生育初期の窒素20mg/100mL/株から生育が進むにしたがって増加させ、7月始めから中旬にかけては最高140mg/100mL/株とし、以後、徐々に少なくする。
2. 灌水同時施肥における土壌水分はpF2.0〜2.1の範囲で推移するが、pF制御灌水では灌水時にはpF2.1、灌水終了後はpF2.5〜2.6程度まで高くなって行くパターンを毎日繰り返す。栽培期間中に要する積算灌水量は、灌水同時施肥では136L/株であるのに対しpF制御灌水では108L/株と20%以上少ない(図1)。
3. 生育ステージ毎に灌水量を設定し、タイマーで2〜3回/日灌水する方式では梅雨時にはpF2.1〜2.3で推移するが、7月後半の高温と生育旺盛期が重なると気象条件によりpF値が2.7〜2.9まで上昇する。一方、pF制御灌水ではpF2.2〜2.7の間での変動パターンを繰り返す(図2)。栽培期間中に要する積算灌水量はタイマー灌水での161L/株に対し、pF制御灌水ではその88%の143L/株と20L程度少なくなる(図3)。
4. pF制御灌水における収量は8.04kg/株で、慣行(タイマー灌水)の8.18kgと同等で、段位別収量についても差は認められない(図4)。なお、可販果率は95%以上で、窒素吸収量は13〜14g/株、そのうち果実吸収量が60%以上を占める。

[成果の活用面・留意点]
1. 定植後活着までは草勢が強くならないよう灌水を控え、1〜2週間程度は草勢を見ながら数日間隔で手動灌水し、根がセンサの深さ15cmまで達した後、pF制御灌水に切り替える。
2. 栽培概要は5月初旬定植、畝幅180cm、株間27cm、栽植密度2,000/10a、収穫期間は7月初旬〜11月上旬(無加温、13〜15段摘心)である。


[具体的データ]

図1 灌水法の違いが土壌水分状態に及ぼす影響
図2 灌水法の違いが夏季(7〜8月)における土壌水分状態に及ぼす影響
図3 トマト生育期間中のpF設定値と灌水量
図4 果実の段位別収量

[その他]
研究課題名:水分センサを用いた夏秋トマトの灌水管理の自動化
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:山田良三、伊藤裕朗

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