サトイモ「大和」のマルチ栽培における生分解性フィルムの増収効果


[要約]
分解の早い生分解性フィルムを用いたサトイモの全期間マルチ栽培では、慣行のポリエチレンフィルムと比べフィルムの分解によって夏期の畝内の地温上昇が抑制され、孫芋の肥大が良く、収量が増加する。

[キーワード]サトイモ、マルチ栽培、生分解性フィルム、地温、収量

[担当]富山農技セ・野菜花き試験場・野菜課
[代表連絡先]電話:0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  富山県におけるサトイモ栽培では、雑草防除、土壌の乾燥や固結の防止、生育初期の地温確保のため、畝をポリフィルムで生育期を通じて覆う全期間マルチが普及しているが、近年、温暖化等の影響により夏期の地温上昇が収量に与える影響が懸念される。一方、環境への配慮から利用の促進が図られている生分解性フィルムによるマルチは、その分解に伴い畝内の地温上昇を抑制する効果が期待できる。そこで、生分解性フィルムの分解が畝内の地温、芋の肥大及び収量に与える影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 生分解性フィルム(黒色、厚さ0.02mm、3ヶ月分解タイプ)地際部の分解は、7月から始まり、原料がポリブチレンサクシネートのフィルムの分解が早い(表1)。また、雑草の発生は少なく、サトイモの生育には問題とならない(データ略)。
2. 慣行のポリエチレンフィルム(黒色、厚さ0.03mm)と比べ、生分解性フィルムにより被覆した場合、夏期の畝内の平均地温は低下する(図1)。また、 8月上旬晴天時の最高地温は原料がポリブチレンサクシネートのフィルムでは約3℃、原料が澱粉脂肪酸エステル酢酸セルロースのフィルムでは約1.5℃低下する(図2)。
3. 生分解性フィルムで被覆することにより、孫芋の1個当たりの重量が慣行のポリエチレンフィルムと比べ大きくなる。特に、原料がポリブチレンサクシネートのフィルムでは孫芋の収量が慣行より20%程度増加する(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 生分解性フィルムは、サトイモ植付け機(S社、TEP100M)により展張できる。
2. この成果は、子・孫芋用種の土垂系「大和」に適用する。


[具体的データ]

表1 生分解性フィルムの種類と分解特性(2005年)
図1 生分解性フィルムの被覆が旬別平均地温に与える影響(2004年) 図2 生分解性フィルムの被覆が晴天時の畝内地温に与える影響(2004年8月1日)
表2 生分解性フィルムの被覆と孫芋重及び収量の関係

[その他]
研究課題名:野菜の環境負荷軽減技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:林  斐、北田幹夫

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