チャのペルオキシダーゼ活性を高める懸濁培養条件


[要約]
増殖培地で懸濁培養したチャのカルスは、高活性培地に移植後、培養温度25℃、8時間もしくは24時間暗期の条件下で、12日目までは高いペルオキシダーゼ活性を示す。

[キーワード]チャ、カルス、ペルオキシダーゼ、懸濁培養

[担当]静岡茶試・育種研究
[代表連絡先]電話:0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  植物培養細胞(カルス)に含まれる酵素ペルオキシダーゼは、医薬品の合成に用いられる有機合成試薬への利用が考えられている。なかでもチャのカルスは、タバコやニンジンのカルスに比べペルオキシダーゼ活性が高く、有望視されている。チャのカルスでは、MS培地にマンニトールを加えて浸透ストレスを強めることで、ペルオキシダーゼ活性が高まることが明らかとなっている。そこで、カルスの増殖が速い懸濁培養において、高いペルオキシダーゼ活性を得るため、培養条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 増殖培地(B5改変)で増殖したカルスを高活性培地(MS改変)に移植し、懸濁培養したときのカルス増殖率及びペルオキシダーゼ活性は、いずれも培養温度25℃で高い値が得られる(図1)。
2. 日長条件は、0h明期及び16h明期で24h明期よりも高いペルオキシダーゼ活性を示す(図2)。
3. カルスを高活性培地に移植後、12日目までは最も高いペルオキシダー活性を示す(図3)。
4. カルスを増殖培養条件から表1の高活性培養条件に移植することで、高いペルオキシダーゼ活性が得られる。

[成果の活用面・留意点]
1. 増殖培地は、B5培地に2,4-D(1.25mg/l)、ベンジルアデニン(0.5mg/l)及びスクロース(0.15M)を加え、pH5.8に調整した培地である。
2. 高活性培地は、MS培地にマンニトール(0.31M)、スクロース(0.09 M)を加え、pH5.8に調製したMS改変培地である。
3. 懸濁培養は、振とう110rpm、培地量30ml、暗条件で行う。
4. ペルオキシダーゼ活性の測定は、オルトアミノフェノール法で行う。
5. 有機合成試薬への利用の基礎資料とする 。


[具体的データ]

図1 培養温度がカルス増殖率、ペルオキシダーゼ活性に及ぼす影響
図2 日長条件がペルオキシダーゼ活性に及ぼす影響 図3 培養期間がペルオキシダーゼ活性に及ぼす影響
表1 ペルオキシダーゼ活性を高める懸濁培養条件

[その他]
研究課題名:有用酵素活性に富むチャ懸濁細胞培養系の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:齋藤武範、青島洋一

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