茶園におけるクワシロカイガラムシの捕食性天敵ハレヤヒメテントウの発生生態


[要約]
茶園におけるハレヤヒメテントウ成虫の発生消長はクワシロカイガラムシ1齢幼虫の発生消長と同調する。また、茶株内におけるハレヤヒメテントウ幼虫の個体数はクワシロカイガラムシの雄繭発生量に伴い増加する。

[キーワード]チャ、クワシロカイガラムシ、ハレヤヒメテントウ、捕食性天敵

[担当]静岡農試・土着天敵プロジェクト
[代表連絡先]電話:0538-36-1557
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  茶園では、クワシロカイガラムシを攻撃する天敵が多種類存在する。ハレヤヒメテントウはクワシロカイガラムシの捕食性天敵として知られるが、その生態については不明な点が多い。そこで、茶園でのハレヤヒメテントウの発生消長や分布におけるクワシロカイガラムシとの関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 静岡県中部地域の茶園において、クワシロカイガラムシの天敵昆虫では、寄生蜂・チビトビコバチが優占するが、ハレヤヒメテントウも多数確認される(表1)。
2. 茶株内に設置した粘着トラップにおけるハレヤヒメテントウ成虫の捕獲数のピークは、クワシロカイガラムシ1齢幼虫の捕獲ピーク日の0〜15日(平均7日)後に認められ、本種成虫の発生消長はクワシロカイガラムシ1齢幼虫の発生消長と同調する(図1)。これらの成虫は、クワシロカイガラムシの捕食と産卵のために茶園に飛来した個体である。
3. 茶株内でのハレヤヒメテントウ成虫の捕獲ピークは、クワシロカイガラムシ雄成虫の捕獲ピーク後にも認められる(図1)。これらの成虫は、茶園内で幼虫期にクワシロカイガラムシの幼虫や雄蛹を捕食して成長し、羽化した個体である。
4. 茶株内におけるクワシロカイガラムシの雄繭発生量とハレヤヒメテントウの幼虫個体数の間には正の相関が認められる(図2)。ただし、この関係は両者の密度により変化し、クワシロカイガラムシの密度が著しく低下した際には、ハレヤヒメテントウ幼虫は認められなくなる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ハレヤヒメテントウを保護・活用するためには、本種成虫が発生・活動するクワシロカイガラムシ1齢幼虫発生期に、本種に影響の強い合成ピレスロイド剤等の薬剤の散布を控える。
2. 茶園でのハレヤヒメテントウ幼虫の発生は、クワシロカイガラムシの雄繭発生量が多い箇所の茶株内を観察することにより確認できる。


[具体的データ]

表1 茶株内の粘着トラップに捕獲された各種クワシロカイガラムシ天敵の総個体数(2004年、牧之原市布引原は2006年)
図1 茶株内の粘着トラップにおけるクワシロ1齢幼虫及び雄成虫とハレヤ成虫の捕獲消長
図2 茶株内におけるクワシロ雄繭発生量とハレヤ幼虫個体数の関係:1プロットは1観察箇所
表2 茶株内におけるクワシロ雄繭発生量とハレヤ幼虫個体数の観察箇所あたり平均値(±標準誤差)のクワシロ世代による変化(調査茶園は図2と同じ)

[その他]
研究課題名:土着天敵の活用による減農薬防除技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:金子修治、多々良明夫、片山晴喜、土井誠、小澤朗人(静岡茶試)
発表論文等:Kaneko et al. (2006) Appl. Entomol. Zool. 41(4):621-626

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