タバココナジラミのバイオタイプQをLAMP法により迅速に識別できる


[要約]
タバココナジラミ虫体1頭の磨砕液をサンプルとして、バイオタイプQのDNAに特異的なLAMPプライマーによるLAMP反応を行い、60分後に反応液の白濁を確認することでバイオタイプQをバイオタイプBと識別できる。

[キーワード]LAMP法、タバココナジラミ、バイオタイプ、識別

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・生物工学グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・生物工学、関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  タバココナジラミは野菜・花き等の重要害虫である。従来から発生しているバイオタイプB(=シルバーリーフコナジラミ)に加え、現在、ネオニコチノイド系、合成ピレスロイド系薬剤に対する感受性が低いバイオタイプQが国内において分布を拡大しつつあり、問題となっている。両バイオタイプは外部形態による識別ができないため、PCR-RFLP法やマルチプレックスPCR法による識別法が開発されている。本研究では、より簡易に短時間で識別できるよう、新しいDNA増幅技術であるLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法による識別方法の開発を試みた。

[成果の内容・特徴]
1. LAMP反応は、増幅対象領域を挟む6か所の塩基配列をもとに設計した4種類のプライマー(F3、B3、FIP、BIP)を用いる。今回設計したプライマー(表1)はバイオタイプQのCOI領域の塩基配列(GenBank accession No.AJ517769)のうち、バイオタイプB(同AJ517768)と相異の多い部分に基づいたもので、バイオタイプQのDNAを特異的に増幅できる。
2. 本法は虫体からDNAの抽出・精製を行う必要がなく、緩衝液中で虫体を軽く磨砕したものをそのまま反応に用いることができる(図1)。
3. LAMP反応によりDNAが増幅すると反応液が白濁するので、60分後にチューブを目視するだけでバイオタイプを確認できる。(図2)。
4. 愛知県内のタバココナジラミ複数個体群を調査した結果、本法とPCR-RFLP法による識別結果は一致した。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培作物に寄生したタバココナジラミのバイオタイプを早期に識別することにより、迅速に適切な防除対策を講じることができる。
2. LAMP反応はきわめて検出感度が高いので、反応液の調製に当たってはコンタミネーションがないように注意する。
3. LAMP反応時間は60分とする。60分を超えると非特異的な白濁が起こることがある。
4. 今回設計したLAMPプライマーは未知サンプルのバイオタイプがBまたはQと想定される場合にQを識別するものである。これら以外のバイオタイプを含めた識別方法については改めて検討する必要がある。


[具体的データ]

表1 タバココナジラミのバイオタイプQを識別するLAMPプライマー
図1 LAMP反応のプロトコール
図2 バイオタイプQ に反応し白濁した反応液(60分後)

[その他]
研究課題名:LAMP法を利用した選抜・診断技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:竹内良彦、福田至朗、大矢俊夫

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