生育後半の肥効を高めた全量基肥肥料によるコシヒカリの白未熟粒発生抑制


[要約]
コシヒカリにおいて、生育後半の肥効が高い全量基肥肥料(速効性肥料:リニア型40日タイプ被覆尿素肥料:シグモイド型100日タイプ被覆尿素肥料=1:1:8)を用いることにより、登熟初中期の葉色を高め、白未熟粒の発生を抑制できる。

[キーワード]コシヒカリ、全量基肥肥料、白未熟粒、葉色

[担当]愛知農総試・作物研究部・水田利用グループ
[代表連絡先]電話:0566-76-2141
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  愛知県では近年、夏季の高温の影響を受け水稲品種「コシヒカリ」で、白未熟粒の発生により外観品質の低下が問題となっている。その要因として、出穂期以降の葉色や体内窒素含有率の低下があげられる。このため、穂肥の時期を遅らせたり、穂肥量を増加させた取り組みが行われている。一方、本県では全量基肥肥料が全水田面積の70%と広く普及していることから、全量基肥肥料の配合を見直し生育後半の肥効を高めることにより、登熟期の窒素栄養凋落を防止し、白未熟粒発生の抑制を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 新しい配合肥料(以下改良肥料)は、慣行肥料に比べ生育前半に肥効を示す速効性肥料及びリニア型40日タイプ被覆尿素肥料の割合を減らし、生育後半に肥効を示すシグモイド型100日タイプ被覆尿素肥料の割合を大幅に増やした(表1)。
2. 稈長、穂長、穂数及び収量については、肥料による差異はない。また、籾数は慣行肥料に比べ抑制され、登熟歩合は向上する(表1)。
3. 生育前半の葉色は肥料による差はないが、出穂期以降は改良肥料区が高い葉色を示す(図1)。
4. 改良肥料区の白未熟粒比は慣行肥料区に比べ低く、発生抑制の効果が認められる(図2)。
5. 白未熟粒比は玄米タンパク質含量と負の相関があり、玄米タンパク質含量が高いほど白未熟粒比は低くなるが、愛知県における玄米タンパク質含量の品質基準である7.7%以下である(図3)。
6. 以上のことから、改良肥料は、コシヒカリの登熟期における窒素栄養凋落を防止し白未熟粒の発生を抑制する。

[成果の活用面・留意点]
1. 慣行肥料に比べ生育後半の肥効が高いため、施肥量が多いと玄米タンパク質含量が高くなる恐れがあることから、地力に合わせて施肥量を調整する。
2. 適応品種はコシヒカリである。
3. 細粒黄色土における4月下旬移植の結果である。


[具体的データ]

表1 肥料の配合割合及び生育調査結果
図1 葉色の推移及び肥料溶出パターン(2006)
図2 肥料による白未熟粒比 図3 白未熟粒比と玄米タンパク質含量の関係

[その他]
研究課題名:水稲の品質向上化技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:杉浦和彦、井上勝弘、野々山利博、林元樹、山下和巳

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