主要アレルゲンの一部を欠失した豆乳用だいず新品種「なごみまる」


[要約]
だいず「なごみまる」は、「タチナガハ」並の収量性・耐倒伏性を備えた品種である。大豆の主要アレルゲンタンパク質の一つであるβ-コングリシニンのうち、αおよびα’サブユニットを欠失している。豆乳等の大豆食品のアレルギーリスク軽減のための原料として利用できる。

[キーワード]ダイズ、β-コングリシニン、αサブユニット、アレルゲン、耐倒伏性、豆乳

[担当]作物研・大豆育種研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8880
[区分]作物、関東東海北陸・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  健康志向の高まりとともに固形分濃度が高い豆乳や大豆を全粒で用いた豆乳様飲料の消費が伸びている。これに伴いこれらの食品に対するアレルギー発症の増加が問題となっている。このため実需者からは大豆の主要なアレルゲンタンパク質を欠失した品種の供給が求められている。そこで、栽培しやすく農業特性を改良したアレルギーリスクの低い品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「なごみまる(旧系統名:関東103号)」は「タチナガハ」を母とし、β-コングリシニンのαおよびα’サブユニットを欠失する「α欠(Ⅰ)(現在の「ゆめみのり」)」を父として人工交配した系統に「タチナガハ」を2回戻し交雑して得られた刈交0542BC2にタチナガハを戻し交雑し、得られた後代から選抜した系統である。
2. 大豆の主要アレルゲンの一つのβ-コングリシニンのうち、αおよびα’サブユニットを欠失する(図1)。
3. 耐倒伏性は「タチナガハ」並に優れる(表1)。
4. 「タチナガハ」並みの収量で、既存の「ゆめみのり」に比べ多収である(図2)。
5. 豆乳類への加工適性は優れる(図3)。
6. 成熟期は「タチナガハ」よりやや早生である(表1)。
7. 百粒重は「タチナガハ」よりやや少ない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 豆乳類の加工原料として、東北中南部〜関東北部での栽培に適する。当面、栃木県で50haの普及が見込まれる。
2. 本品種はアレルゲンタンパク質を全て欠失しているわけではないので、アレルギーフリーではない。
3. 豆乳を除く豆腐等通常の食品加工適性は劣る。
4. モザイク病やシストセンチュウに抵抗性を持たないため、多発地域では栽培を避ける。
5. 低アレルゲン性を損なわないため普通品種との混植を避けるとともに、収穫・調整時には異品種が混入しないように留意する。


[具体的データ]

図1 「なごみまる」の電気泳動像 図2 配布先等における「タチナガハ」との収量差
図3 豆乳様飲料の食味評価
表1 「なごみまる」の主要特性

[その他]
研究課題名:大豆におけるアレルゲン、カドミウム等の健康リスク低減技術の開発
課題ID:211-b
予算区分:加工業務用2系
研究期間:1993〜2006年度
研究担当者: 羽鹿牧太、高橋浩司、山田哲也、小巻克巳、平賀勧、高田吉丈、島田尚典、境哲文、島田信二、足立大山、田渕公清、菊池彰夫、湯本節三、中村茂樹
発表論文等:品種登録出願 第20432号

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