「コシヒカリ」の乳白粒発生を軽減する登熟期の間断灌漑法


[要約]
出穂後30日間、間断灌漑を繰り返す条件下では、土壌水分の状態がpF1.0になったら入水を行うことで乳白粒の発生が減少する。入水時期における田面の状態は中粗粒グライ土の場合、田面は僅かに湿って見え、手で触れると湿り気を感じる程度である。

[キーワード]コシヒカリ、乳白粒、間断灌漑、pF

[担当]茨城農総セ・農研・水田利用研究室
[代表連絡先]電話:0297-62-0206
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  近年、水稲登熟期の高温化による玄米品質の低下が全国的な問題となっている。茨城県でも平成14年には乳白粒が多発し、「コシヒカリ」の1等米比率が著しく低下した。このため、乳白粒の発生を軽減する様々な栽培管理が指導されている。登熟期の間断灌漑はその一つであるが、玄米品質からみた入水間隔や入水時期の目安は明らかではない。そこで、乳白粒の発生からみた適正な間断灌漑法を明らかにしようとした。

[成果の内容・特徴]
1. 登熟期に常時湛水及びそれぞれpF1.0、pF1.5、pF2.0で入水する間断灌漑を行った。pF1.0入水区、pF1.5入水区、pF2.0入水区の入水間隔は、それぞれ3.5日、4.5日、5日程度であった(図1)。
2. 乳白粒の発生は、自然条件下及び高温処理を行った「コシヒカリ」、「初星」ともpF1.0の入水区が最も少ない。pF1.5及びpF2.0に入水する間断灌漑区でも、常時湛水区に比べ乳白粒の発生が減少するものの、発生量にばらつきがみられる(表1)。
3. pF値と田面の乾湿状態との関係は中粗粒グライ土の場合、以下のとおりである。
 

1) pF1.0:田面は僅かに湿って見え、手で触れると湿り気を感じる(図2)。

 

2) pF1.5:田面は乾燥して見えるが、手で触れると僅かに湿り気を感じる。

 

3) pF2.0:田面は乾燥して見え、手で触れても全く湿り気を感じない。


[成果の活用面・留意点]
1. 中粗粒グライ土において深さ15cmのpF値を6時間おきに測定した。入水時の水深は3cm程度である。
2. 登熟期(7月第6半旬〜8月第6半旬)の降水量は、2004年:平年比72%、2005年:平年比186%であり、両年ともpF1.0で入水する間断灌漑は実施できた。降雨により湛水状態が継続する場合は、排水して間断灌漑に努める。
3. 生育期に中干しを実施すれば、登熟期に土壌を湿潤に保つ水管理を行っても倒伏や収穫作業に支障のない地耐力は得られる。
4. 登熟期の入水回数は従来より2回程度増え、水管理に要する労働時間はha当たり1〜1.5時間増加する。


[具体的データ]

図1 登熟期におけるpF値の推移(2004年)
表1 登熟期の土壌水分が品質、収量に及ぼす影響(2004、2005年)
図2 入水時期(pF1.0)における田面の状況

[その他]
研究課題名:水稲玄米の乳白米発生軽減及び過乾燥防止による商品性向上技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:田中研一、狩野幹夫

目次へ戻る