大麦によるリビングマルチと狭畦密植栽培を組み合わせた大豆の雑草防除技術


[要約]
秋播き性の高い大麦によるリビングマルチと大豆の狭畦密植栽培を組み合わせることで、地表面の光量子密度の低下が早まることから、無中耕・無除草剤でも雑草防除が可能である。リビングマルチの有無は大豆の収量や関連特性にはほとんど影響を与えない。

[キーワード]大麦、狭畦栽培、雑草防除、大豆、リビングマルチ

[担当]中央農研・カバークロップ研究関東サブチーム
[代表連絡先]電話:029-838-8522
[区分]共通基盤・作付体系・雑草、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  大豆作では、除草剤と中耕を組み合わせた雑草防除体系が基本である。しかし、中耕には多くの労働時間がかかることや除草剤への過度の依存を避けるという観点から、除草剤の使用を最小限にした無中耕栽培体系の構築が必要である。
  そこで、大麦によるリビングマルチと大豆の狭畦密植栽培を組み合わせることで、無中耕でできるだけ除草剤を使用しない雑草防除技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. この技術は、大豆を狭畦密植 (畦間35cm×株間10cm:約28株m-2) で播種し、同時にその条間に秋播き性の高い大麦 (春〜夏に播種すると出穂せずに自然と枯死するもの:播性がⅣ以上のもの) を10アール当たり10kg程度条播して,リビングマルチとして利用するものである (表1図1)。
2. 大豆の狭畦密植栽培と大麦のリビングマルチを組み合わせた処理区 (LM-D区) では、地表面の光量子密度は早く低下する。雑草の生育を著しく阻害する相対光量子密度 (10%) になるまでの日数は、LM-D区で約31日であり、標準区 (CC-S区) と比べて17日程度、狭畦密植のみ区 (CC-D区) と比べて5日程度短縮される (図2)。
3. リビングマルチとして利用した大麦は、7月中旬頃には乾物重が50gm-2程度になるが、その後座止して8月上旬にはほぼ枯死する。雑草の乾物重は、リビングマルチ区では除草剤を施用していないためにやや多いが、LM-D区ではCC-D区と同程度まで低下する (図3)。
4. 大豆の播種密度は、主茎長、分枝数、茎の太さなどに影響するが、リビングマルチの有無は、収量、収量構成要素及び関連特性にほとんど影響を与えない (表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. この研究成果は中央農研の畑圃場 (土壌は黒ボク土、優占雑草はヒユ類、メヒシバ) で、大豆品種「タチナガハ」、大麦品種「シンジュボシ(播性Ⅳ)」を利用して行った試験により得られたものであり、関東・東海地域を中心とした温暖地 (播種適期は6月中旬頃) を対象としたものである。
2. 狭畦密植栽培は大豆の倒伏を助長するので、倒伏に強い大豆品種を利用する。
3. 雑草の発生 (特にヒエ類) が多く見込まれる圃場や排水性の悪い圃場などでは、リビングマルチの雑草抑制効果が劣る場合がある。


[具体的データ]

表1 リビングマルチ(LM) と播種密度を組み合わせた大豆「タチナガハ」の収量,収量構成要素及び関連特性.
図1 大麦によるリビングマルチを利用した大豆の狭畦密植栽培(2006年7月4日). 図2 相対光量子密度の推移.
図3 雑草及び大麦の乾物重の推移.

[その他]
研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
課題ID:214-c
予算区分:基盤
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:三浦重典、中谷敬子、澁谷知子、田澤純子
発表論文等:三浦ら (2005) 日本作物学会関東支部会報20:78-79.

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