半促成トマトの栄養診断に基づく追肥は接ぎ木栽培で自根栽培より減肥が可能である。


[要約]
半促成トマトの接ぎ木栽培において、葉柄汁液の窒素栄養診断に基づいて追肥をすると、総施肥窒素量は自根栽培に比べて21〜25%低減する。本施肥法による収量・品質は自根栽培と同等である。

[キーワード]半促成トマト、汁液栄養診断、接ぎ木栽培、台木

[担当]千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  トマト半促成栽培における減肥技術として、これまでに‘ハウス桃太郎’の自根栽培における栄養診断に基づく追肥法により、目標収量を確保しつつ、窒素施肥量を慣行施肥量(31kg/10a)の49〜68%減肥できることを示した(平成14年度研究成果情報)。
  近年、施設トマト栽培では、土壌病害虫を回避するために抵抗性台木を利用することが多い。台木は、一般に自根に比べて吸肥力が強いとされ、施肥に対する作物の反応が異なると想定される。そこで、台木を利用した接ぎ木栽培に本法を適用し、自根栽培と比べて減肥できるかを明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 葉柄汁液中硝酸濃度は、自根区が2,000ppm程度まで低下したとき(3月17日)、各台木区とも4,000ppm程度と高い(図1)。
2. 葉柄汁液中硝酸濃度に基づく追肥回数は、自根区の7回に対して台木区は4〜5回である。その結果、基肥と追肥の合計窒素施肥量は、自根区の18.0kg/10aに対して、台木区が13.5〜14.3kg/10aで、21〜25%の減肥となる(表1)。
3. 収量は、各台木区間に差はなく、自根区と同等である(表2)。
4. 果実の糖度と硬度は、各台木区間に差はなく、自根区と同等である(表2)。
5. 栽培跡地の土壌中硝酸態窒素濃度は、0〜30cm層では自根区と台木区が同等であるが、30〜60cm層では自根区に比べて台木区が少ない(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 施肥前の土壌中硝酸態窒素レベルが低い条件での結果である。
2. 施肥前の土壌中硝酸態窒素量が10mg/100g乾土以下のため、基肥窒素を7.5kg/10aとした(土肥誌76:825〜831(2005))。
3. 本試験では、牛ふん堆肥(N-P2O5-K2O=1.0-1.0-1.2)を1t/10aを施用している。
4. 半促成栽培における追肥判定の葉柄汁液硝酸濃度基準値は2,000ppmである。(平成14年度研究成果情報「トマト半促成栽培における栄養診断に基づく追肥法」)。


[具体的データ]

図1 葉柄汁液中硝酸濃度推移(反復1)
表1 栄養診断に基づく追肥が施肥窒素量に及ぼす影響
表2 栄養診断に基づく追肥が収量及び果実の糖度と硬度に及ぼす影響
図2 栽培跡地の土壌中硝酸態窒素量(反復1)

[その他]
研究課題名:トマト台木利用における栄養診断に基づく施肥法の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:山本二美、松丸恒夫
発表論文等: 山本・松丸(2005)土肥誌76:825〜831.
山本・松丸(2006)土肥誌77:413〜418.

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