肥効調節型肥料のトマト鉢内層状施肥による施肥量削減と省力化


[要約]
トマト抑制栽培において、被覆燐硝安加里を鉢上げ時に育苗鉢内に層状施肥または混合施肥することにより、慣行と同等の収量が得られ、30〜40%の減肥となり、本ぽでの施肥作業が不要となる。

[キーワード]トマト、肥効調節型肥料、層状施肥、鉢内施肥、肥料削減、省力化

[担当]静岡農試・土壌肥料部・作物栄養研究室
[代表連絡先]電話:0538-35-7211
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術 ・ 参考

[背景・ねらい]
  トマト栽培は、育苗を含めた栽培期間が長く、追肥作業も煩雑である。静岡農試では平成15年度に鉢内全量施肥によるトマト栽培において、2割の施肥削減を実現したが、層状施肥、及び鉢内全量施肥のさらなる施肥削減について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 肥料は肥効調節型肥料(被覆燐硝安加里N-P-K=14-12-14、140日初期溶出抑制タイプ)を用いた。施肥法は、鉢の下方に層状に施用した「鉢内層状施肥(層状施肥)」と鉢上げ時に培土と混和する「鉢内全量施肥(混和施肥)」とする(図1)。
2. 定植時において、層状施肥、混和施肥を行なった苗では、対照より葉色と作物体窒素含有率が高くなるが、その他の生育に大きな差はない。また、培土の電気伝導度も対照より高く、肥料成分の過剰な溶出が認められるが、濃度障害は認められない(表1)。
3. 本ぽにおける収量は層状施肥、混和施肥ともに慣行と同等である。このとき、30%〜40%の施肥窒素量の削減が可能となる。層状施肥の場合、肥料と培土を混合する手間を省くことができる(表2)。
4. 肥効調節型肥料は、栽培後期まで成分の溶出が継続する(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験の耕種概要は、は種:7月中旬、斜め合わせ接ぎ:8月上旬、鉢上げ:8月上旬、定植:9月上旬、摘心:6段、栽培終了:1月中下旬、品種:「ハウス桃太郎」、台木:「がんばる根」であった。灌水はチューブ灌水で行った。栽植密度は2084本/10aである。本ぽはガラス温室で白黒マルチを施し栽培した。培土は市販品(1kgあたり窒素1.5g)を使用し、育苗鉢は直径12cm、容量600ccである。本ぽは洪積土(造成台地土細粒赤色土相)、及び沖積土(細粒灰色低地土相)である。
2. 鉢上げ時の育苗鉢内施肥から定植までの育苗期間は3週間程度とする。
3. 定植前の本ぽはソルガムで均一栽培を行い、栽培前土壌(洪積土H17年)は無機態窒素0.8mg/100g、可給態窒素0.5mg/100g、可給態リン酸134mg/100g、交換性カリ34mg/100g、跡地土壌の電気伝導度は、対照区 0.25mS/cm、層状施肥区、混和施肥区とも0.07mS/cmである。
4. 肥料経費は約5割の削減となる(慣行44,200円/10a、育苗鉢内施14kg 22,800円/10a、育苗鉢内施12kg 19,543円/10a:平成18年2月価格調査)。


[具体的データ]

図1 育苗鉢内施肥の方法
表1 鉢上げ後3週間経過時(定植時)におけるトマト苗の生育状況注1)(平成17年度)
表2 トマト果実収量注1)
図2 被覆燐硝安加里の溶出率と栽培期間中の日平均地温(H17年度)

[その他]
研究課題名:農作物品種及び生産資材の比較、検定、調査
予算区分:受託
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:中村仁美、小杉徹、神谷径明

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