水稲−コムギ二毛作体系(ポット栽培)におけるコムギ子実中カドミウム濃度の品種・系統間差


[要約]
国内育成50品種・系統のコムギを、カドミウム高濃度土壌を充填したポットに水稲−コムギ二毛作体系で栽培した時の子実中カドミウム濃度には、品種・系統間差が認められる。最高濃度と最低濃度の比率は2.6〜3.9である。

[キーワード]カドミウム、コムギ、子実、品種間差

[担当]群馬農技セ・生産環境部・土壌環境グループ
[代表連絡先]電話:0270-30-7799
[区分]関東東海北陸農業・関東東海土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  2006年7月までにCodex委員会で、多くの食品中のカドミウム濃度について国際基準値が決定された。カドミウム吸収に関する知見は、水稲、ダイズについては多く、その低減化技術も開発されている一方、コムギなど畑作物については少ない。そこで、コムギの子実中カドミウム濃度の品種・系統間の差を検討し、今後の低減化技術の基礎的知見を得る。

[成果の内容・特徴]
1. カドミウム高濃度土壌(0.1M塩酸可溶性カドミウム濃度が約5.5mg/kg乾土)を充填したポットにおいて、水稲−コムギ二毛作体系で栽培した国内育成50品種・系統のコムギには、子実中カドミウム濃度に品種・系統間差が認められる(表1)。
2. 2005、2006年産コムギの子実中カドミウム濃度は、それぞれ0.54〜2.12mg/kg、0.54〜2.03mg/kgに分布し、最高濃度と最低濃度の比率はそれぞれ3.9、3.7である(表2図1)。
3. 一方、2004年(試験初年)産コムギの子実中カドミウム濃度は、1.40〜3.70mg/kgに分布し、最高濃度と最低濃度の比率は2.6である(表2)。
4. 子実中カドミウム濃度には年次間の相関関係が認められ、これら子実中カドミウム濃度の違いは品種・系統間の差によることが示唆される(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験の結果は、乾土として保存されていたカドミウム高濃度土壌(自然負荷・灰色低地土)を、2003年6月(水稲作前)に充填したポットを用い、群馬県農業技術センター前橋研究拠点において、水稲−コムギ二毛作体系で実施した結果であり、データの活用にあたっては注意が必要である。
2. コムギの子実中カドミウム濃度は、子実水分12.5%ベースで表記した。
3. 本試験の結果は、コムギの子実中カドミウム濃度の低い品種の選抜・育成およびカドミウム低減化技術の開発に関する基礎的知見として活用できる。


[具体的データ]

表1 二元配置による子実中カドミウム濃度の分散分析 表2 各年次の子実中カドミウム濃度の平均、最低、最高濃度(mg/kg)
図1 子実中のカドミウム濃度の品種間差(2005、2006年産)
図2 子実カドミウム濃度の年次間の相関関係

[その他]
研究課題名:地域に適合したカドミウム低吸収品種の開発
予算区分:受託(有害化学物質カドミウム)
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:新井朋二、塚本雅俊

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