大型施設のハーブ類における複合交信撹乱剤の防除効果


[要約]
ハーブ類を栽培している大型施設(1,000m2規模)において、複合交信撹乱剤(アルミゲルア・ウワバルア・ダイアモルア・ビートアーミルア・リトルア剤)を200本/10a設置することにより、ハスモンヨトウ及びコナガを効果的に防除できる。

[キーワード]交信撹乱、性フェロモン、施設栽培、ハーブ類、コナガ、ハスモンヨトウ

[担当]千葉農総研・応用昆虫研究室、農業改良課、海匝農振セ、千葉農振セ
[代表連絡先]電話:0475-52-4315
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  2004年に複合交信撹乱剤であるアルミゲルア・ウワバルア・ダイアモルア・ビートアーミルア・リトルア剤が野菜類のコナガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、ヨトウガ、オオタバコガ、タマナギンウワバに対して農薬登録された。本剤の防除効果は露地栽培で認められているが、施設栽培における防除効果は明らかではない。これまでの交信撹乱剤を用いた試験において、施設のみの小面積の設置では、施設の換気方法、フェロモンディスペンサーの設置数量と設置位置、害虫密度などの影響で交信撹乱効果が不安定になることが指摘されている。そこで、大型施設において本剤を露地栽培の使用基準の倍量(200本/10a)設置し、登録農薬が少ないハーブ類を対象作物として、対象害虫に対する防除効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 複合交信撹乱剤(アルミゲルア・ウワバルア・ダイアモルア・ビートアーミルア・リトルア剤)を1,000m2規模の大型施設に200本/10a設置すると、ハスモンヨトウ及びコナガの雄成虫はフェロモントラップに誘引されなくなる(表1図1)。
2. 本剤の交信撹乱効果により、ルッコラにおけるコナガの幼虫数及びチャービルにおけるハスモンヨトウの幼虫数は減少する。また、ルッコラのコナガによる食害株数及びチャービルのハスモンヨトウによる食害株数も著しく減少する(表2表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本剤の有効期間は3〜4か月であるため、防除効果を持続させるには、設置してから3〜4か月後に100本/10aの追加設置を行う。
2. 施設の側部開口部、天窓、出入口に防虫ネットを設置し、防除対象害虫の侵入を防ぐ。
3. 施設の天井近くに張られている番線などを利用し、なるべく高い所に均一に本剤を設置する。
4. 本剤の使用基準は100本/10aであり、現時点で施設に200本/10a設置する農薬登録はない。施設に100本/10a設置した防除効果は未確認である。
5. 今回の試験ではハスモンヨトウ及びコナガが発生したため、両種に対する防除効果が確認された。他の対象害虫でも同様の防除効果が期待できる。


[具体的データ]

表1 ハスモンヨトウのフェロモントラップにおける調査時期(月/日)別の誘殺数(頭/週)
表2 ハスモンヨトウによるチャービルの食害株数及びハスモンヨトウの幼虫数
図1 コナガのフェロモントラップにおける誘殺数
表3 害虫によるルッコラの食害株数及びコナガの幼虫数

[その他]
研究課題名:害虫に対する新農薬の効果検定
予算区分:県単及びメーカー委託
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:片瀬雅彦、清水喜一(農業改良課)、大木 浩(海匝農振セ)、内田重夫(千葉農振セ)
発表論文等:片瀬ら(2006)関東病虫研報 53:115-118.

目次へ戻る