子葉と種皮の乾湿からみた大豆亀甲じわ粒の発生機構と軽減技術


[要約]
亀甲じわは単粒子実水分が13%未満に乾燥した後に、種皮が吸湿すると子葉から種皮が剥離し、立毛中に吸湿と乾燥の繰り返しによって、発生と消滅を繰り返しながら増加する。そのため、従来より早い時期に収穫することにより発生を軽減できる。

[キーワード]ダイズ、しわ粒、亀甲じわ、種皮、剥離、子実水分

[担当]新潟農総研・作物研
[代表連絡先]電話:0258-35-0047
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  北陸産大豆は1・2等の上位等級比率が低く、格落ち理由の多くはしわ粒の混入によるもので、しわ粒発生防止技術が早急に求められている。しわ粒は子実の臍の反対側が細かく波状となる「ちりめんじわ」と種皮が亀甲状に隆起する「亀甲じわ」に大別できるが、新潟県は北陸地域の中では特に「亀甲じわ」の発生が多い。そこで「亀甲じわ」の発生機構を解明し、発生防止を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 子実の位置によって乾燥による収縮率が異なり、収縮率の高い部分では吸湿により種皮が子葉から剥離して亀甲じわになることが多い(図1)。
2. 子葉と種皮は吸湿始から約1時間の吸湿速度が大きく異なり、急激な種皮の吸湿膨張が子葉から種皮を剥離させ、亀甲じわになるものと考えられる(図2)。
3. 吸湿前の単粒子実水分が13%未満、特に11%未満であると吸湿により種皮の剥離が著しく多くなる(図3)。
4. 吸湿によって発生した亀甲じわは乾燥によって、しわが消える粒と消えない粒があり、乾湿の繰り返しによって、徐々に消えない粒が増加する(図3)。
5. 成熟期頃で平均子実水分が22%以下に低下したら、直ちに収穫することにより亀甲じわ粒の発生を軽減できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. コンバイン収穫に際しては汚粒や損傷粒の発生に留意し、刈取りの可否を判断する。
2. 単粒水分の測定は平成18年度成果:大豆「エンレイ」の子実水分の簡易測定法を参照する。
3. 供試品種は「エンレイ」、図2は大粒を用いた。


[具体的データ]

図1 子実の位置別収縮率(2004年)
図2 種皮と子葉の吸湿速度の違い(2006年)
図3 加湿処理による剥離粒の発生と乾湿の繰り返しによる亀甲じわ粒の増減(2006年)
図4 亀甲じわ粒の発生経過(新潟作研圃場)及び現地コンバイン収穫時期と亀甲じわ粒率(2006年)

[その他]
研究課題名:北陸地域に多発する大豆しわ粒の発生防止技術の開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:佐藤徹、服部誠、田村隆夫、市川岳史

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