多収で餅質の良い水稲新品種候補「越南糯196号」


[要約]
「越南糯196号」は寒冷地南部では早生に属し、「恵糯」、「カグラモチ」より多収である。搗き餅としての餅質は優れる。

[キーワード]イネ、糯、多収、搗き餅

[担当]福井農試・作物・育種部・育種研究グル−プ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]作物・稲、関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  現在、寒冷地南部で作付けされている「恵糯」、「カグラモチ」等の糯品種は収量性が低い。
  このため、それら品種に比べて収量性が安定して高く、玄米外観、餅質ともに優れた品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「越南糯196号」は、1994年に早生で糯質の良い糯系統「越南糯144号」を母とし、早生で多収の粳品種「ふくひびき」を父として福井県農業試験場で人工交配を行った組合せ後代から育成された糯系統である。
2. 出穂期、成熟期は「恵糯」とほぼ同じで、育成地では“早生”に属する(表1)。
3. 稈長は「恵糯」より5cm程度低い。穂長は「恵糯」よりやや長く、穂数は同程度の“中間型”である。耐倒伏性は「恵糯」と同程度である(表1)。
4. ふ先色は出穂期頃には目立たないが、登熟が進むにつれて「褐色」になり、粳品種との識別性がある。
5. 収量性は「恵糯」、「カグラモチ」に比べ高い(表1)。
6. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,z ”と推定され、葉いもち、穂いもち圃場抵抗性は共に“やや強”である。白葉枯病抵抗性は“弱”、穂発芽性は“中”、障害型耐冷性は“中”である(表1)。
7. 玄米千粒重は「恵糯」、「カグラモチ」より大きく、外観品質は良い(表1)。
8. 搗き餅の食味は、「恵糯」、「カグラモチ」と同等に良好である。また、搗き餅の硬化性は「恵糯」、「カグラモチ」よりやや遅い。

[成果の活用面・留意点]
1. 適応地域は北陸、関東以西の地域である。
2. 群馬県で奨励品種に採用予定。
3. 親和性の菌が出現するといもち病に侵されるので、その発生に注意し、発病を認めたら適期に防除を行う。
4. 白葉枯病に弱いので、常発地での栽培は避ける。


[具体的データ]

表1 特性一覧表

[その他]
研究課題名:寒冷地南部向け極良食味、高品質および多収品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1994〜2006年度
研究担当者: 冨田桂、堀内久満、寺田和弘、神田謹爾、田野井真、小林麻子、田中勲、見延敏幸、古田秀雄、山本明志、青木研一、正木伸武、南忠員、杉本明夫、鹿子嶋力、堀内謙一

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