飼料用水稲「クサユタカ」「夢あおば」の散播直播栽培での生育診断


[要約]
湛水散播直播の「クサユタカ」「夢あおば」において穂首分化期頃の葉色は全乾物収量との相関が高く、生育診断指標となりうる。多収のためにはこの時期の葉色(SPAD値)を苗立密度70本/m2水準で42〜44以上、125〜175本水準で40以上に保つ必要がある。満たない場合は診断後すぐに窒素追肥を行うことで減収程度が軽減される。

[キーワード]稲発酵粗飼料、飼料イネ、クサユタカ、夢あおば、生育診断、直播

[担当]中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
[代表連絡先]電話:025-526-3241
[区分]関東東海北陸農業・北陸水田作畑作、共通基盤・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  稲発酵粗飼料向き品種は、全乾物多収という栽培目的や品種特性からみて生育診断基準が食用品種と大きく異なるとみられる。そこで、湛水散播直播栽培での「クサユタカ」と「夢あおば」について、適切な診断時期ならびに診断のための指標を明らかにするとともに、生育補填のための診断後追肥の適切な時期を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
1. 「クサユタカ」、「夢あおば」の黄熟期全乾物収量は、苗立密度70本/m2水準では最高分げつ期ならびに穂首分化期頃の葉色(SPAD値)、茎数、草丈との相関が高く植被率との相関は低い(表1)。苗立密度125〜175本/m2水準では両品種とも穂首分化期の葉色との相関が高い。
2. 収量との相関の高さと測定の容易さから、いずれの品種とも苗立密度にかかわらず診断時期は穂首分化期頃が妥当で、診断指標として葉色(SPAD値)を用いることが適する(表1)。
3. 苗立密度70本/m2水準では穂首分化期頃の葉色(SPAD値)を44以上に、125〜175本/m2水準では40以上を保つことにより、1700g/m2以上の黄熟期全乾物収量が得られる(図1図2)。
4. 穂首分化期頃の生育診断により葉色が淡い場合、早めの窒素追肥によって減収程度を軽減することができる(表2)。追肥の効果は施用時期が遅れるにしたがって低下する。また、診断時の葉色値が低いほど効果は小さくなる。表2は苗立密度70本/m2の場合であるが、さらに苗立密度が高い125、175本/m2の場合も窒素追肥の効果は同様な傾向にある(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「クサユタカ」「夢あおば」を用いた稲発酵粗飼料の湛水散播直播栽培に適用する。
2. 本成果は細粒グライ土壌での酸素発生剤無粉衣の落水散播直播法で得た結果による。播種期は5月8〜12日で、黄熟期収穫までに倒伏程度3以上の倒伏は発生しなかった。窒素施用量(kg/10a)は基肥が一律3kg/10aで、生育の変異を得るため播種後30日の分げつ初期に0〜3kgの範囲で追肥した。収量は黄熟期に地際刈りした後、機械乾燥した全乾物重である。
3. 出穂期の推定は、関東東海北陸農業研究成果情報平成15年度Ⅲ 270-271p記載の「飼料イネと大麦の2年3作体系における播種・収穫作業計画の支援ツール」を利用する。


[具体的データ]

表1.調査時期別の生育指標と全乾物収量との相関係数
図1.穂首分化期頃の葉色と全乾物収量 図2.穂首分化期頃の葉色と全乾物収量
表2.葉色診断後の窒素追肥時期と効果(夢あおば2005年)

[その他]
研究課題名:飼料イネ品種の直播特性解明と最適栽培管理法の策定
課題ID:212-b-02
予算区分:交付金プロ(北陸大麦飼料用稲輪作)
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:松村修、千葉雅大、山口弘道(東北農研)

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