有機質資材の長期連用による畑作物の収量確保と化学肥料の低減技術


[要約]
牛糞堆肥またはし尿汚泥を5年間連用した圃場での夏作スイートコーン、秋作ダイコンの栽培において、窒素施肥量の40%を牛糞堆肥またはし尿汚泥に代替することによって、化学肥料と同等以上の収量が得られ、牛糞堆肥の場合には地下水への硝酸態窒素の溶脱量を半分以下に抑制できる。

[キーワード]有機質資材、畑作、収量、溶脱

[担当]福井農試・生産環境部・土壌・環境研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  環境に配慮した農業への取組みでは堆肥等の有機質資材の利用が必須となっている。しかし、一定量の有機質資材を連用した圃場において野菜を栽培する場合の収量や地下水など周囲の環境に及ぼす影響には不明な点も多い。
  そこで、簡易ライシメーター試験により、有機質資材の連用が野菜の収量および硝酸態窒素等の環境負荷に与える影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 有機質資材を連用した圃場で、化学施肥量の40%、基肥施肥量としては60%を牛糞堆肥(牛糞籾殻堆肥)で代替した栽培を行うと(表1)、スイートコーン、ダイコンの収量は同等以上確保できる(表2)。
2. 同様に、し尿汚泥(農業集落排水汚泥)で代替すると、スイートコーンの収量は化学肥料と比較して20%増加し、ダイコンでも同等となる(表2)。
3. この場合、硝酸態窒素の溶脱量を牛糞堆肥では50%に、し尿汚泥では75%に抑制できる(図1)。
4. 有機質資材を連用すると、化学肥料区と比較して土壌中の全炭素、全窒素が増加し、この効果は、牛糞堆肥が高い(表3)。
5. し尿汚泥を連用すると土壌中の重金属(亜鉛)濃度が上昇する傾向にある(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 有機質資材から供給される窒素の量は資材の種類や熟成状態によって異なり、また、連用することによって増減する。従って、使用する場合には有機質資材および土壌の分析値に基づき、作目ごとの施肥設計に従い適正量を投与する。
2. 特に、し尿汚泥を使用する場合には重金属(亜鉛)が集積しやすいので、資材および土壌の分析を実施し、土壌管理基準(120ppm)を上回らないよう投入量を調整する。


[具体的データ]

表1 試験区の構成(簡易ライシメータ、1区30m2×5)と資材の化学成分組成
表2 スイートコーンとダイコンの平均収量 図1 ライシメータからの硝酸態窒素溶脱量の変化
表3 跡地土壌の全炭素と重金属濃度(2005年)

[その他]
研究課題名:有機質資源施用基準の策定調査(ライシメーター試験)
予算区分:国補、県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:坪内  均、水澤靖弥、神田美奈子

目次へ戻る