クズ疫病菌はダイズ茎疫病菌とは異なる新種のPhytophthora属菌である


[要約]
クズ疫病菌はダイズ茎疫病菌とは形態および分子系統群が異なり、新種のPhytophthora属菌である。ダイズ茎疫病菌とクズ疫病菌はそれぞれクズ、ダイズに病原性がある。

[キーワード]クズ、クズ疫病、ダイズ、ダイズ茎疫病、新病害、Phytophthora属、病原性

[担当]富山農技セ・農業試験場・病理昆虫課
[代表連絡先]電話:076-429-5249
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  ダイズ茎疫病菌は寄主範囲が狭く、また、伝染環には未解明な部分があるが、本病の伝染源植物について調査している中で、2005年7月上旬に富山市において、ダイズ茎疫病の発生圃場横に自生しているクズ(Pueraria lobata:マメ科クズ属)に、疫病様の症状が発見された。そこで、クズから分離された菌の形態的特徴および病原性等からダイズ茎疫病菌との異同を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. クズ疫病は葉に灰褐色または茶色〜黒褐色で不整形の比較的大きな病斑を形成し、葉柄や茎が軟化して細くくびれる症状を示す新病害である(図1-a、b)。
2. 富山、石川の19ヶ所から分離されたクズ疫病菌の形態は、ダイズ茎疫病菌と同様に遊走子のうの乳頭突起は目立たないが、蔵精器が蔵卵器に底着性である点がダイズ茎疫病菌とは異なる(図1-c、d及び表1)。
3. ダイズ茎疫病菌とクズ疫病菌はそれぞれクズとダイズに無傷接種でも病原性を示し、病徴は酷似している。また、いずれもアズキには病原性がなく、有傷接種によりインゲン、エンドウに対して病原性を示す。
4. 核リボゾームDNAのITS領域およびミトコンドリアのシトクロームオキシダーゼⅡ遺伝子の塩基配列による分子系統解析では、クズ疫病菌はダイズ茎疫病菌とは異なる単系統群になり、新種のPhytophthora属菌である(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. マメ科植物に寄生するPhytophthora属菌の病原性分化研究に活用できる。
2. クズ疫病菌およびダイズ茎疫病菌の代表的分離菌株を、独立行政法人製品評価技術基盤機構へ寄託保存した。


[具体的データ]

図1 クズ疫病の病徴(a:葉, b:茎)と病原菌(c:遊走子のう, d:蔵卵器と蔵精器)
表1 クズ疫病菌とダイズ茎疫病菌の形態
図2 シトクロームオキシダーゼII 遺伝子の塩基配列に基づく分子系統樹

[その他]
研究課題名:ダイズにおける立枯性病害の原因究明と防除対策試験
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:向畠博行、景山幸二(岐大流域研セ)、関原順子

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