冬季のトンネル畦間マルチによる初夏どり一本太ネギの高品質多収栽培法


[要約]
初夏どりネギ栽培では、2畦単位でトンネル及びマルチ被覆する「トンネル畦間マルチ」栽培を行うことにより、上物収量が多くなる。千葉県の北総地域における本栽培法の播種適期は10月上旬で、この場合の定植及び被覆の適期は11月下旬〜12月上旬である。

[キーワード]ネギ、作型、トンネル栽培、抽台

[担当]千葉農総研・北総園芸研究所・畑作園芸研究室
[代表連絡先]電話:0478-59-2100
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  千葉県内の主要産地の初夏どり一本太ネギ栽培では、収穫時の抽台低減対策として冬季に1畦ごとに小型トンネルで被覆している(図1右)。一本太ネギの出荷は6月が多く、5月は坊主不知ネギの出荷が多い。しかし、分げつ性の坊主不知ネギは、一本太ネギに比べて形状が劣り、また、葉鞘部が硬く食味評価が劣るため、市場から良質な一本太ネギの生産が求められている。そのため、初夏どり一本太ネギ栽培において生育を早めることができる生産技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 初夏どりネギ栽培おいて、トンネルとマルチを組み合わせ2畦単位で被覆して密閉する「トンネル畦間マルチ」栽培(図1)は、慣行のトンネル栽培(無マルチ)に比べて上物収量が5%多い(表1)。
2. トンネルは厚さ0.05mmのポリオレフィン系フィルム、マルチは厚さ0.02mmのグリーンまたは黒色ポリフィルムを使用する。畦間90cmの場合のフィルム幅は、トンネルが230cm、マルチが110cmである。被覆直後は密閉管理で、2月中〜下旬から孔換気を開始し、3月下旬にトンネル、マルチともに除去する。
3. 千葉県の北総地域の黒ボク土畑において、10月上旬に播種し、11月下旬〜12月上旬に定植及びマルチ・トンネル被覆した場合、5月下旬〜6月上旬の抽台率が10%以下で、上物収量が最も多い(図2図3)。9月下旬以前の播種は、生育が早まるが抽台率が高くなるため避ける。
4. 10月上旬播種での10a当たり上物収量は、「春扇」が3.9〜5.0t、「羽緑一本太」が3.4〜4.1tで、「春扇」の収量性が高く、目標収量(4.0t)に達する(図3)。
5. 「トンネル畦間マルチ」栽培では、マルチ内に設置した潅水チューブによる潅水(40〜80mm)で、上物収量が4〜14%高まる(データ略)。

[成果の活用面・留意点]
1. 上記は、千葉県の北総地域の黒ボク土畑(香取市)の試験で得られた結果である。
2. 10a当たりの施肥成分量は、抽台抑制と低温期の生育促進のため、千葉県の施肥基準(作型:夏どり栽培)よりやや多くする(窒素30kg、りん酸38kg、加里27kg)。栽植密度は慣行(45,000本/10a)に準じる。


[具体的データ]

図1 「トンネル畦間マルチ」栽培(左)と慣行の小型トンネル栽培
表1 初夏どりネギのトンネル栽培における被覆方法の違いとマルチの有無がネギの生育及び収量に及ぼす影響
図2 初夏どりネギの「トンネル畦間マルチ」栽培における播種時期の違いが抽台率に及ぼす影響
図3 初夏どりネギの「トンネル畦間マルチ」栽培における播種時期の違いが上物収量に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:トンネル栽培における5月どり一本太ネギの安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:中村耕士、長谷川誠

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