ハクビシンとアライグマを登らせて感電させる効果の高い電気柵


[要約]
対策に苦慮するハクビシンとアライグマによる農作物被害回避技術として、安価な直管パイプと防風ネットを組み合わせた誰にでも簡単に設置できる電気柵を開発した。

[キーワード]野生動物、外来種・移入種、物理的防除技術

[担当]埼玉農総研・茶業特産研究所・中山間営農担当
[代表連絡先]電話:0494-22-0273
[区分]共通基盤・病害虫(虫害)、関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(鳥獣害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  近年、ハクビシンやアライグマによる農作物被害地域が急速に拡大し、農作物も多様化している。果樹中心であった被害がスイートコーンやトマトなどの果菜類にも広がっている。両種は優れた運動能力を持ち、夜間に活動することから被害対策が遅れている。被害作物の多様化や被害地の拡大に対処するため、広く現場に対応できる直管パイプと防風ネットを組み合わせた電気柵を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. ハクビシンとアライグマは樹上に登ることが得意なため、防護柵等の障害物は登って侵入する。このとき障害物と地面に隙間があれば隙間を優先とするが、侵入のために自ら穴を掘ることはしない。
2. ハクビシンとアライグマの「登る」習性を利用した電気柵は、直管パイプと防風ネットを組み合わせて作る(図1表1)。
3. 電気柵の電源は、設置制限がなく簡単に移動や撤去ができることから乾電池式を利用する。乾電池式の効果は従来のAC電源のものと差がなく感電効果は高い。
4. 直管パイプで組んだ棚の上端部に位置する横パイプから5cm離してプラスの電線を設置し、棚全体をマイナスとする。侵入を試みるハクビシンとアライグマは垂直に設置した防風ネットを登り、棚の水平部分に足をかけプラスの導線に体の一部が触れることにより感電し侵入できない。
5. この電気柵をブドウやミカン、ブルーベリー等の果樹、スイートコーン、スイカ、トマト等果菜類のほ場に設置したところ、作物被害は収穫終了時点まで見られない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 隙間があると潜って侵入しようとするため、防風ネットの裾はしっかりと埋める。
2. タヌキやアナグマ等、ネットを登ることが得意でない動物が生息している場合はネットを破かれる場合があるので収穫期間は毎日チェックする。
3. 棚の上部に電線を設置するため、草による漏電の心配はないが、作物の伸長に伴う接触により漏電する場合があるので注意する。
4. 電池による作動期間は夜間だけの使用で3カ月程度であるが、劣化とともに機能も低下するので、設置時には新しいものを使用する。
5. 弾性ポールを切断せずに使用することにより、鳥害防止のための防鳥ネットを設置することができる。
6. この電気柵の詳細については「ハクビシン・アライグマの被害防止柵 埼玉方式白落くん設置マニュアルver2.2」に記載されている。


[具体的データ]

図1 設置状況
表1 供試資材
表2 現地実証試験

[その他]
研究課題名:野生動物の農作物被害防止総合対策の推進
予算区分:有害動植物防除等体制整備事業
研究期間:2005〜2007年度
研究担当者:古谷益朗
発表論文等:白落くん設置マニュアル:ver2.2 2007

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