製麺用高アミロース水稲品種候補系統「北陸207号」


[要約]
「北陸207号」は、寒冷地南部では中生の早に属する粳種で、日本型で、やや短稈、偏穂重型の高アミロース米の製麺用系統である。製麺時の麺離れが良く、麺への加工適性が高い。

[キーワード]イネ、高アミロース、製麺用

[担当]中央農研・低コスト稲育種研究北陸サブチーム
[代表連絡先]電話:029-526-3239
[区分]作物、関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  2006年度の食料自給率は、カロリーベースで前年度から1ポイント低下し39%となり、より一層の米の需要拡大のため、麺、パンなど米の粉体として利用を積極的に進める必要がある。一部で米を原料とする麺の製品化が試みられているが、コシヒカリ等の良食味品種は、麺の表面の粘りが強く、麺離れが悪いことが欠点とされている。そこで、粘りが少ない高アミロース米で、麺離れが良く、製麺適性を持つ水稲品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「北陸207号」は、インド原産の在来種「Surjamukhi」のWx座を、分子マーカーを指標とした連続戻し交配により、日本型品種「キヌヒカリ」に導入した高アミロース系統である。短粒の日本型品種であるため、選別、精米など従来の日本型品種に対応した調整方法が適応できる。
2. 白米のアミロース含量は、「キヌヒカリ」、「コシヒカリ」より15ポイント程度高く、「夢十色」並みであり(表1)、麺に加工した場合に麺離れが良く、商品化が可能である(表2)。
3. 「コシヒカリ」より、出穂期は2日ほど早い“中生の早”、成熟期は「コシヒカリ」とほぼ同じ“中生の早”に属する。稈長は、「キヌヒカリ」並の“やや短”、穂長は“やや短”、穂数は「コシヒカリ」よりやや少ない“中”、草型は“偏穂重型”である。耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、“やや強”である。収量性は、標肥区では「コシヒカリ」よりやや少収であるが、多肥区では「コシヒカリ」並である。千粒重は、「コシヒカリ」よりやや重い“中”である(表3)。
4. いもち病真性抵抗性遺伝子はPii を持つと推定され、圃場抵抗性は、葉いもちは“中”、穂いもちは“やや弱”である。穂発芽性は “やや易”であり、穂孕期の障害型耐冷性は「コシヒカリ」より弱く“弱”である(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 麺に利用した時の麺離れがよく、製麺素材として利用できる。
2. 障害型耐冷性が弱いため、冷害の危険のある地域での栽培は避ける。
3. いもち病耐病性が不十分なため、適期防除に努める。
4. 穂数が少ないので、分げつ数を確保するために、一般食用品種よりも増肥する必要がある。しかし、極端な多肥栽培では倒伏する可能性もあるため、地力に合わせた施肥を行う。
5. 穂発芽性がやや易であるため、適期刈り取りに努める。


[具体的データ]

表1. 「北陸207 号」の白米中のアミロース含有量( % )
表2.「北陸207 号」の製麺時の概評(2005 年産米 自然芋そば株式会社)
表3.「北陸207 号」の特性一覧

[その他]
研究課題名:直播適性に優れ、実需者ニーズに対応した低コスト業務用水稲品種の育成
課題ID:311-a
予算区分:基盤、加工プロ4系
研究期間:1990〜2007年度
研究担当者:三浦清之、笹原英樹、後藤明俊、重宗明子、上原泰樹、小林 陽、
                  太田久稔、清水博之、福井清美、大槻 寛、矢野昌裕、小牧有三

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