集落営農組織の合併における営農情報ネットワークの再編方策


[要約]
ぐるみ参加型の集落営農組織が合併する場合、営農情報が特定のリーダーに集中すると合併組織の運営に支障をきたす。そのため能力に応じた役員選出を図りリーダー同士が重層的に連携する体制を築くことで情報伝達の効率化と指揮命令系統の構築が図れる。

[キーワード]集落営農、合併、営農情報、ネットワーク、リーダー

[担当]中央農研・農業経営研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838- 8481
[区分]共通基盤・経営、関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、規模の経済の追及や主たる従事者の確保などを目的に集落営農組織(以下、集落営農)が合併する事例が増えている。しかし、それら合併組織では、組織管理の範囲が広域化する一方、構成員の情報収集の範囲は合併前の組織に限定されやすいことから、構成員に営農情報を的確に伝えていくことが課題となる。そのためには、合併に際して、従前の集落営農の営農情報ネットワーク(以下、ネットワーク)を効率的に再編していく必要がある。そこで、富山県O組合を対象に、合併前後に農業や組織の情報を誰から情報得たかについての調査結果をもとに、集落営農の合併におけるネットワークの再編方策を提示する。

[成果の内容・特徴]
1. 合併前のO組合では、営農情報の入手先は、個人的な相互関係を基礎にしながら、詳しい情報を持つ一部の者に集中している(表1)。そのため、これら情報が偏在する中核的リーダー(ハブ)に不測の事態等が発生すれば、情報伝達の遅れや生産管理の適期逸脱等の問題が生じる恐れがある(図1)。
2. この組織では、合併に当たって、既存の集落営農に対して、合併後の役員には「年齢や肩書きではなく仕事のできる能力のある人」の推薦を求めるとともに、旧集落営農の役員でも、主な情報発信先でない者は合併組織の管理運営を担う役職に配置しないという対応を行っている(表1)。
3. さらに、合併後の役職の配置も、特定の集落に集中させず、例えば、栽培担当と相互連携が必要な機械担当は異なる集落から選任する等、集落を横断している(表1)。
4. これら組織再編の結果、構成員の情報入手先は、合併前の24名から合併後には18名へと25%減少し、情報入手先一人当たりの平均紐帯数も合併後は増加するなど(表2)、情報伝達の効率化が図られると共に、合併組織の指揮命令系統が確立されている。構成員への情報伝達に関して、O組合の構成員に「私はO組織の現在の活動や将来方向を理解しているし情報も十分に得ている」の設問を行った結果、「そう思う」、「ややそう思う」の合計は60%(回答者78名の47名)を示し、「あまりそうは思わない」、「そう思わない」の14%を大きく上回っている。これは、情報の入手先が限定する中で、構成員の大半は情報を十分に獲得できていることを示している。
5. 同時に、少数に絞り込まれたリーダーは、役職の配置の工夫を通じて、集落を越えたネットワークを重層的に構築している(図2)。こうしたリーダーの重層化は、特定のリーダーに障害が生じても他集落のリーダーからの情報発信が可能となることから、組織運営の円滑化が可能となる仕組みとなっている。

[成果の活用面・留意点]
1. 安定兼業地域に多く展開しているぐるみ参加型組織の合併の際に活用できる。
2. ここでのネットワークは、営農情報の伝達や入手に関するものを対象にしている。

[具体的データ]
表1 集落営農組織におけるの役職と情報の入手先表2 営農情報の入手先数の変化 
図1 合併前の集落営農情報ネットワークの状況 図2 合併後のリーダのネットワーク
[その他]
研究課題名:関東・東海・北陸地域における個別経営体の総合的経営管理手法及び多様な主体間連携による地域活性化手法の開発
中課題整理番号:211a.3
予算区分:基盤
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:高橋明広

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