傾斜地水田における畦畔・法面管理負担の実態


[要約]
傾斜地水田における畦畔・法面管理作業は平坦地に比べて、作業に要する面積は約3倍、面積あたりの作業時間は約1.5倍となり、全体の作業時間は約4.5倍となる。農家が管理作業に充当可能な利益は減少しており、畦畔・法面管理作業費用をカバーできない。

[キーワード]傾斜地、中山間地、畦畔、法面、管理作業、草刈り

[担当]愛知農総試・企画普及部・経営情報グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
水田の畦畔・法面管理作業は、農業経営の効率化に当たっての障害要因として、特に中山間地では、 農業経営の継続そのものも阻害する要因として指摘されているが、それに伴う農業者の負担の大きさは解明されていない。傾斜地ではほ場整備により広大な法面が造成される一方で、法面管理作業は農林統計(米及び小麦の生産費調査)の対象になっておらず隠れた負担となっている。そこで、傾斜地水田の畦畔・法面の草刈り作業の実態について、50〜70歳代の農家3戸を対象に、実測、農家記帳、聞き取り、観察、台帳調査から把握するとともに平坦地水田の場合と比較し、負担を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 調査対象地域は、愛知県岡崎市の山あいを流れる河川に沿って形成された水田地帯で、水田耕地面積は18.9ha、うち本地は16.2haであり、2.7haが畦畔・法面にあたる。農家数は34戸で一戸当たり水田耕地面積は55aである。平成2年にほ場整備が完了しており、水田の標準区画は30a、地形勾配1/10〜1/200の傾斜地である。
2. この地域の畦畔率は14.3%と全国平均5.7%の2.5倍であるが、傾斜や凹凸等があるため表面積はさらに大きくなる。調査事例では、地図・台帳上の面積246uに対して、表面積の実測値は385uと1.5倍であり、このことから傾斜地水田の草刈り作業を要する畦畔・法面の表面積は平坦地に比べて3倍以上となる。
3. 傾斜地水田の畦畔・法面の草刈り作業時間は表面積10a当たり10.0時間に対して、調査地域の河川管理堤など平坦な場所では6.7時間であることから、傾斜地では平坦地の1.5倍の作業時間を要する。
4. これらを基に水田30aでの作業を想定して試算した結果、傾斜地における畦畔・法面管理作業時間は24.0時間と平坦地5.4時間の約4.5倍になる(表1)。
5. 傾斜地水田30aでの畦畔・法面管理作業に係る費用は水田10a当たり17,173円で、平坦地8,720円の2.0倍近い負担となる(表2)。また、この地域の平均水田耕地面積55aを想定した試算では傾斜地14,427円で平坦地5,419円となる。農家が水田の管理作業を行う場合(全作業委託)と行わない場合(経営委託)の利益の差を水田管理に充当可能な金額と考えると、その額は減少しており(図1)、稲作の所得では畦畔・法面管理作業費用をカバーできない。

[成果の活用面・留意点]
1. 中山間地農家の支援施策を検討するための基礎データとなる。

[具体的データ]

表1 水田30a当たり畦畔・法面管理作業の面積及び時間

表2 水田30a当たり畦畔・法面管理作業にかかる費用   (単位:円)

図1 水田10a当たりの利益と管理作業に充当可能な金額の推移(東海)

[その他]
研究課題名:地域マネジメント手法の研究
予算区分:県単
研究期間:2007〜2010年度
研究担当者:鬼頭功、淡路和則(名古屋大学)、三浦聡(名古屋大学)

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