自走式動力散布機と多孔ホースによる水稲湛水直播


[要約]
自走式動力散布機と粒剤散布用の多孔ホースを用いれば、水稲種子を効率的に表面散播できる。畦畔噴頭より良好な散布精度が得られ、酸素供給剤粉衣種子を用いれば苗立ち率は約47%となる。

[キーワード]多用途水稲、湛水直播、播種技術、種子分布、作業能率

[担当]中央農研・北陸大規模水田作研究チーム
[代表連絡先]電話:025-526-3218
[区分]共通基盤・作業技術、関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・総合研究(飼料イネ)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
エタノール原料用や飼料用としての多用途水稲生産では、高いレベルでの低コスト性が求められており、燃料用では投入エネルギーや炭酸ガスの低減も重要である。背負い式動力散布機と畦畔噴頭の組み合わせは、簡易な播種技術として広く利用されているが、散布精度や作業能率の面で改善すべき点も多い。そこで、自走式動力散布機と多孔ホースの組み合わせを取り上げ、その散布精度と発芽・苗立ち等への影響、作業能率の面から実用性を評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 本技術は、市販の自走式動力散布機とこれに接続する粒剤散布用の多孔ホース(図1)、及び当該機で事前に最適化を行ったスロットル開度や調量装置開度等のデータからなる。自走式動力散布機と多孔ホースの組み合わせでは、背負い式動力散布機と畦畔噴頭の組み合わせと比較して、散布のばらつきが少なく種子ホッパの大型化も容易である。
2. 散布後の種子の分布は、畦畔噴頭では散布機の手元側に偏る傾向である。これに対し、多孔ホースでは、スロットル開度や調量装置開度を適切に設定することにより均一な散布が可能である。機関回転数が高い場合に遠方に偏る傾向がある(図2)。
3. 播種機及びホース内での衝突等により、播種作業後の発芽率は無粉衣種子で91%程度となり、畦畔噴頭を使用する場合より5%程度低くなる。一方、酸素供給剤(カルパー)粉衣種子では発芽率は96%程度となり、播種管路内での影響は無くなる(表省略)。
4. 苗立ち率は酸素供給剤粉衣種子で46.5%であり、播種量4.5kg/10aの場合に苗立ち数は66本/m2程度となる(表1)。条播区の苗立ち率49.1%に対して、多孔ホース区ではほぼ同等の苗立ち率が得られ、苗立ち数のばらつきも条播区とほぼ同等である。
5. 多孔ホースでは2人作業が基本となるが、1人当たりの作業能率では背負い式動散とほぼ同等となる。また、本法では圃場両端でのホース展開及び巻き取り等の付帯作業が必要となる。そのため圃場長辺が長いほど作業能率は高くなり、面積1haの大区画圃場で往復作業を行う場合の作業能率は6分/10a程度となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 高い耐倒伏性を有する多用途水稲品種「夢あおば」を用いた結果である。
2. 乗用条播機では能率的でない大区画圃場や長辺が平行な圃場において、能率的に均一に表面散播する簡易技術として活用できる。
3. 異なる機種を用いる場合は、スロットル開度や調量装置開度の設定とその時の散布のばらつきをあらかじめ確認する必要がある。
4. 送風機の回転数が高すぎるとホースが破れることがあるので、多孔ホースは取り付け部付近が強化された物が望ましい。また、酸素供給剤粉衣種子では、送風機の回転数を上げすぎると、衝突により粉衣が剥離するので注意が必要である。

[具体的データ]
図1 多孔ホースによる表面散播 図2 多孔ホースでの種子の分布

表1 苗立ち及び収量の比較

表2 作業能率の比較

[その他]
研究課題名:飼料イネ及び燃料用イネの生産に関わる効率的機械作業技術の開発
課題ID: 212-b.2
予算区分: 実用技術
研究期間: 2007〜2009年度
研究担当者: 元林浩太、松村 修

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