ISO22000(HACCP)を応用した黄色ブドウ球菌乳房炎の制御


[要約]
ISO22000(HACCP)を応用した黄色ブドウ球菌(SA)乳房炎の制御に取り組むことにより、SA乳房炎の発生頭数割合が有意に減少し、これらの対策を実施していない農場と比較してバルク乳体細胞数も低く推移する。

[キーワード]ISO22000、HACCP、黄色ブドウ球菌乳房炎

[担当]静岡畜研・安全生乳プロジェクトスタッフ
[代表連絡先]電話:0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
黄色ブドウ球菌(SA)は牛乳房炎の主要な原因菌で、食中毒の原因にもなるため公衆衛生学的にも重要視されている。そこで、当研究所が取得したISO22000食品安全マネジメントシステム(HACCPを中核とした食品安全の国際規格)を応用して、黄色ブドウ球菌乳房炎の制御を行い、その有効性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 乳牛飼育と搾乳に関する全261工程を解析し、SA乳房炎の危害が発生しうる工程を特定する。それらの工程1つごとに危害の重要度判定と管理手順を決定し、とくに重要な工程は許容限界を設けて「重要管理点(CCP)」として管理する。
2. 上記1の解析作業の結果、以下7つをSA乳房炎制御の管理手順とする。
1) 前搾り(乳房炎の早期発見)
2) 乳房炎発症時の細菌検査によるSA保菌牛の特定
3) 乳房炎牛を1群にまとめて最後に搾乳する
4) 乳房炎牛搾乳前のパイプライン切替え(バルクタンクへの乳房炎乳の混入防止)
5) 乳房炎牛を搾乳したら、ただちにミルカーを塩素消毒する
6) バルクタンク乳温の確認・記録(運用上指標は5℃以下、許容限界は10℃)
7) SA保菌牛の管理(治療、早期乾乳、計画的淘汰)
このうち、6)は生産物(生乳)そのものへの重要な危害となりうるので、重要管理点(CCP)として管理する。
3. 半年間のSA乳房炎の発生頭数割合が26.0%のA農場(搾乳牛40〜50頭)に上記の管理手順を導入したところ、1年半後には5.0%に減少する (P<0.01) (図1)。
4. 一方、上記の管理手順を導入しないB農場(SA乳房炎の発生割合40.0%)における7ヶ月間の平均バルク乳体細胞数は34.7×104cells/mlで、A農場の7.5×104cells/mlより高く(P<0.01)、毎月ごとに比較してもB農場のバルク乳体細胞数はA農場より高い(P<0.05)(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 酪農家におけるSA乳房炎対策として広く応用できる。
2. 農場HACCP認証制度取得へ向けた衛生管理手法としても有用である。
3. 本手法導入にあたっては、一般的衛生管理(正しい搾乳手順等)が遵守されていることが前提条件になる。

[具体的データ]

図1 A農場におけるSA乳房炎の発生頭数割合

図2 A、B農場におけるバルク乳体細胞数

[その他]
研究課題名:ISO22000(HACCP)に基づいた安全な生乳生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:赤松裕久、檀原麻実、小柳寿文
発表論文等:国内初、生乳生産施設におけるISO22000(HACCP)正式認証.臨床獣医27(8):21−25、2009

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