肥育後期における生稲わらサイレージ給与は牛肉中のビタミンE含量を高める


[要約]
肥育後期(20〜26カ月齢)の黒毛和種去勢牛に生稲わらサイレージ20%と配合飼料の代替として生米ぬかを5〜10%混合した発酵TMRを給与すると、牛肉中のビタミンE含量は高まるが、脂肪酸組成は変化しない。

[キーワード]生稲わらサイレージ、生米ぬか、発酵TMR、黒毛和種去勢牛、ビタミンE

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
近年、肉用肥育牛への生米ぬかや稲発酵粗飼料の給与により、牛肉中のビタミンE(α‐トコフェロール)含量が高まり肉の褐色化が防止されることが報告されている。また、枝肉脂肪の脂質改善を目的とし、一部の農家では、従来から米ぬかの給与が行われている。
 そこで、水田地帯で入手しやすい食用米副産物である生稲わらサイレージや未脱脂米ぬか(生米ぬか)を肉用肥育牛向けの発酵TMRの材料として調製し、肥育後期(20〜26カ月齢)の黒毛和種去勢牛へ給与した場合の血液性状、牛肉中のビタミンE含量および脂肪酸組成について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 本試験で給与した生稲わらサイレージは、稲刈り直後の稲わらを当日中にサイレージ調製したものであり、そのビタミンE含量は243〜551mg/kg(乾物中)で、乾燥稲わらに比較して高く、これを混合した発酵TMR中のビタミンE含量は、配合飼料と稲わらを分離給与する慣行区に比較して高くなる(表1)。
2. 肥育後期(20〜26カ月齢)の黒毛和種去勢牛に生稲わらサイレージを20%混合した発酵TMRや乾燥稲わらの代替として生稲わらサイレージを給与すると、配合飼料と乾燥稲わらを分離給与する慣行法に比較して、牛の血漿中ビタミンE濃度は高く推移する(図1)。
3. 生稲わらサイレージを20%混合した発酵TMRや乾燥稲わらの代替として生稲わらサイレージを給与した牛の牛肉中のビタミンE含量は、慣行区の3倍と有意に(p<0.01)高い(図2)。
4. 配合飼料の代替として生米ぬかを5〜10%混合した発酵TMRを、黒毛和種去勢牛に肥育後期の6カ月間給与しても、牛肉の脂肪酸組成は変化しない(表2)。
5. 肥育後期の黒毛和種去勢牛に生稲わらサイレージを20%混合した発酵TMRや乾燥稲わらの代替として生稲わらサイレージを給与すると、慣行給与に比較して飼料摂取量が増加し、日増体量や枝肉成績が優れる傾向にある。

[成果の活用面・留意点]
1. 肥育後期に生稲わらサイレージやこれを乾物中20%混合した発酵TMRの給与により、牛肉中のビタミンE含量が高まり、肉色の保持や脂質酸化抑制効果が期待できる。
2. 生稲わらサイレージや生米ぬかを混合した発酵TMRは、肥育後期の黒毛和種去勢牛の給与飼料として利用できる。

[具体的データ]
表1 給与飼料の配合割合、成分組成およびビタミンE含量
図1 肥育後期に生稲わらサイレージや発酵TMRを給与した黒毛和種虚勢牛の血漿中ビタミンE濃度(各区n=5) 図2 肥育後期に生稲わらサイレージや発酵TMRを給与した黒毛和種虚勢牛の胸最長筋中のビタミンE含量(各区n=5)
表2 肥育後期に生稲わらサイレージや発酵TMRを給与した牛の胸最長筋中の脂肪酸組成
[その他]
研究課題名:生稲わらサイレージおよび食用米副産物等を活用した黒毛和種去勢牛向け発酵TMR調製・給与技術の開発
予算区分:委託プロ(えさ)
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:高平寧子、金谷千津子、吉野英治、廣瀬富雄、丸山富美子

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