ビタミンC給与が黒毛和種去勢牛の肉質に及ぼす効果


[要約]
安心・安全で高品質な牛肉生産技術として、肥育牛に対するバイパス性ビタミンC(VC)製剤の給与は、肥育後期の血漿中VC濃度低下期における給与により、脂肪交雑、きめ、しまり等の向上に対する効果が認められる。

[キーワード]黒毛和種、肥育、ビタミンC、肉質向上

[担当]栃木畜試・畜産技術部・肉牛研究室
[代表連絡先]電話:028-677-0302
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、消費者からの牛肉生産における安心・安全に対する要望への対応として、投薬やストレスの低減といった牛の健康に配慮した飼養技術が求められており、この一つとして、ビタミンC(VC)給与が注目されている。VC給与は抗ストレス作用や免疫力向上による疾病予防が期待されるだけでなく、脂肪交雑の向上や光沢・きめ・しまり等の肉質改善効果も報告されている。最近、肥育の進展により血漿中VC濃度が低下することが報告されているが、和牛肥育におけるVCの添加方法や作用など未だ不明な点が多く、利用技術を検討する必要がある。そこで、VCの肥育後期における給与が和牛肥育牛の発育・肉質等に及ぼす影響を明らかにし、高品質な牛肉生産技術の開発を図った。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種去勢肥育供試牛(試験、対照区各4頭 半兄弟牛)の血漿中VC濃度は肥育経過に伴って徐々に低下する。
2. 1頭当たり40mg/体重kg/日(ルーメンバイパス性VC製剤30%濃度を使用)のVC製剤を24カ月齢から30カ月齢の期間給与することにより有意に血漿中VC濃度は上昇する。しかし、VC製剤の給与を続けると一旦上昇した血漿中濃度は徐々に低下する(図1)。
3. 血漿中VC濃度とVA濃度変化に関連性はみられない。また、肥育期間中のVC給与による増体への顕著な影響は認められない(図2)。
4. 超音波画像診断によりVC製剤給与によって脂肪交雑の発達が促進する効果を確認することができる(図3図4)。
5. VC製剤を給与することにより、32カ月齢でのと畜における枝肉格付値で特にBMS・きめ・しまり等の肉質に関する評価が改善できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 黒毛和種肥育牛に対して、肥育後期(24〜30カ月齢間)に40mg/体重/日のVC製剤を給与することにより肉質改善が期待できる。
2. VCの給与効果を確実にするためには、肥育牛の血漿中VCが低下した時期に確実に所定量のVC製剤を給与させねばならない。この際に、VC濃度の低下は症状として顕在化しづらいので、血漿中濃度を計測する必要がある。
3. 現在の血漿中VC濃度測定は、煩雑な分析作業が必要なので、今後簡易診断技術を開発する必要がある。

[具体的データ]
図1 VC製剤給与の有無における血漿中VC濃度の推移 図2 VC製剤給与の有無における血漿中VA濃度の推移
図3 VC製剤給与開始時及び開始2カ月後の超音波診断画像 図4 超音波診断画像より解析したVC給与の有無における胸最長筋領域内の平均輝度の比較
表1 VC製剤給与の有無における枝肉成績平均値の比較
[その他]
研究課題名:ビタミンC給与が黒毛和種去勢牛の発育及び肉質に及ぼす影響の分析
予算区分:県単
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:白井幸路、堀井美那、川田智弘

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