雌雄産み分け用選別精液を用いた黒毛和種の過剰排卵処理


[要約]
黒毛和種の過剰排卵処理に雌雄産み分け用選別精液を用いると、通常精液に比べ正常胚数、正常胚率は低下するが、バイオプシーによる性判別に比べ効率的に雌雄の産み分けができる。

[キーワード]黒毛和種、過剰排卵誘起処理、雌雄選別、精子

[担当]群馬畜試・大家畜係
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
現在受精卵による雌雄産み分けは、バイオプシーにより雌雄判別を行う方法が一般的であるが、凍結保存後の移植受胎率は満足し得るものではなく、更なる技術開発が求められている。近年、フローサイトメーターによる牛新鮮精液からX・Y精子が90%の正確度で選別できる技術が開発され、人工授精により目的の性の子牛を生産することが可能となっている。
 そこで、この雌雄産み分け用選別精液を用いて黒毛和種の過剰排卵処理を行い、効率的な産み分け技術を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 供卵牛は平均4.3産(初産〜11産)で、過剰排卵誘起処理(SOV)は、総量13AUのFSHを4日間朝夕漸減的に投与する低単位投与法により実施する。また連続してSOVを行う場合は、前のSOVとの間隔を最短でも42日以上空ける。
2. 精液は家畜改良事業団の雌雄産み分け選別精液を用い、精子数は0.5mlストロー1本当たり600万である。
3. 雌雄産み分け用選別精液を用いると、平均正常胚数は3.4〜5.8個回収でき、種雄牛、精子数、X、Y精液の違いによる差は認められない(表1)。
4. 通常精液(精子数3000万)と比較すると正常胚数は若干少なく(表2)、正常胚率は有意な差(p<0.05)が見られる。
5. 採取した受精卵は通常精液により採取した受精卵と同等の受胎率である(表3)。
6. 本研究のデーターを元に試算すると、生産される産子の数はバイオプシーによる性判別よりも多く、効率良く雌雄産み分けができる(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 雌雄生み分け用選別精液を用いることにより、効率的に雌雄の産み分けがおこなえる。
2. 雌雄産み分け用選別精液は、フローサイトメーターによるX・Y選別の影響で生存時間が短く、ストロー内精子数も少ないことから、通常精液とは授精適期が異なると思われるので、正常胚数・正常胚率向上のため、過剰排卵前の卵胞波の初期化や、人工授精時の排卵誘発剤の使用について検討が必要である。

[具体的データ]

表1 雌雄選別精液を用いた黒毛和種の採卵結果

表2 精子数による採卵結果

表3 移植成績 表4 受精卵による子牛の生産性(試算)
[その他]
研究課題名:牛受精卵推進
予算区分:県単
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:加藤聡、堀澤純、船内克俊(家畜改良事業団家畜改良技研)、坂本与志弥(家畜改良事業団家畜改良技研)、木村博久(家畜改良事業団家畜改良技研)

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