稲発酵粗飼料を肥育全期間に給与した褐毛和種の肥育成績と牛肉の特徴


[要約]
褐毛和種に対し肥育全期間に稲発酵粗飼料を原物で5〜6kg/日給与すると、稲ワラを給与した区に比べ遜色のない発育および枝肉成績が得られる。また、牛肉(腰最長筋)に対照区の2倍のビタミンEが蓄積し、牛肉の保存日数に伴うTBARS値が低く推移する。

[キーワード]稲発酵粗飼料、褐毛和種、枝肉成績、ビタミンE、TBARS値

[担当]埼玉農総研・酪農・肉牛担当
[代表連絡先]電話:048-536-0442
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
飼料稲の栽培および稲発酵粗飼料(以下、イネWCS)の利用は、飼料自給率の向上、安全な牛肉の生産および循環型農業を推進するものとして期待されているが、褐毛和種肥育牛に給与した報告は少ない。また、他品種の肥育においてもイネWCSの給与時期を肥育前期または肥育前期と後期に制限したものが多く、全期間給与の報告は少ない。そこで、イネWCSを褐毛和種肥育牛に全期間給与した場合の発育状態、枝肉成績、牛肉の特性について調査する。

[成果の内容・特徴]
1. 肥育農家の褐毛和種に肥育全期間(11〜26ヶ月)にわたり、イネWCSを原物で5〜6kg/日(中等量給与区、前・中期6kg、後期5kg)または6.6〜10kg/日(多量給与区、前期10kg、中期7.6〜8.0kg、後期6.6kg)給与し、発育状態、枝肉成績、牛肉の特徴を調査する。中等量給与試験では雌牛を使用し対照区に稲ワラを給与、多量給与試験では去勢牛を使用し対照区にイタリアンストローを給与する。
2. 1日当たり増体量は中等量給与区、多量給与区ともに対照区との間に差がない。
3. 枝肉重量は中等量給与区(437.8kg)が対照区(424.8kg)よりも多い傾向であるのに対し、多量給与区(435.5kg)では試験開始時の体重に差があったこともあり、対照区(484.8kg)よりも有意に少ない。肉質は中等量給与区で対照区と差がないが、多量給与区では脂肪交雑基準が対照区よりやや劣る(表1)。
4. イネWCSはビタミンE含有量が多いため、中等量給与区の腰最長筋のビタミンE濃度は6.4mg/kgとなり、対照区(3.0mg/kg)より高い。多量給与区では腰最長筋のビタミンE濃度が5.2mg/kgであり、対照区(2.9mg/kg)より高く、半腱様筋においてもバラツキが大きいものの多量給与区のビタミンE濃度が高い傾向である(図1)。腰最長筋のビタミンE濃度において、多量給与区が中等量給与区を上まわらなかったのは、肥育後期のイネWCS給与量に大きな差がなかったためと推察される。
5. 脂質酸化の程度を示すTBARS(2-チオバルビツール酸反応物質)値は、中等量給与試験における腰最長筋の保存13日目で、中等量給与区が0.45mgMDA/kg肉であり対照区の1.98mgMDA/kg肉より低く推移する(図2)。多量給与試験においても、多量給与区の腰最長筋はTBARS値が低く推移するが、半腱様筋では多量給与区のTBARS値が対照区より低いものの、腰最長筋よりも高い水準で推移する(多量給与区1.68mgMDA/kg肉、対照区2.10mgMDA/kg肉、13日目)。

[成果の活用面・留意点]
1. 牛肉の品質保存性(脂質の酸化抑制)向上により有利に販売できる可能性がある。
2. 試験を行った農家では飼料イネを給与した褐毛和種を「はまさり牛」としてブランド化している。
3. 試験を行った農家では慣行区においてもビタミンA制御をしていない。

[具体的データ]

表1 中等量給与試験の枝肉成績

表2 多量給与試験の枝肉成績

図1 牛肉中のビタミン濃度

図2 TBARS値の推移(中等給与試験、腰最長筋)

[その他]
研究課題名:交雑種去勢牛等の稲発酵粗飼料給与量と産肉技術の確立
予算区分:交付金プロ(関東飼料イネ)
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:吉羽宣明
発表論文等:吉羽、埼玉農総研研報(2008)、8:25-32

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