牛の雌雄判別胚の細胞採取法および保存技術の確立


[要約]
牛雌雄判別胚において、細胞への損傷の少ない吸引法による細胞採取法と、超急速ガラス化保存法を併用することにより、従来の切断による細胞採取法と比較して、高い受胎率を得ることができる。

[キーワード]雌雄判別、吸引法、超急速ガラス化保存法、クライオトップ

[担当]石川県畜産総合センター・技術開発部
[代表連絡先]電話:0767-28-2284
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
凍結保存した性判別胚の受胎率は新鮮胚に比較して著しく低く、性判別技術の普及を困難にする一要因となっている。凍結保存胚の受胎率が低い原因として、細胞採取する際の金属刀による切断が胚へ大きな損傷を与え、その結果耐凍性を低下させていることが考えられる。そこで胚に対する損傷の少ない微量サンプル採取法および保存技術を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 細胞採取法の検討として、回収した体内胚179個(切断法119個、吸引法60個)を性判別した結果、判別率は切断法で85.7%、吸引法で98.3%である。また産子の性別と判定結果との一致率は、切断法で100%(14/14: ♂ 7 ♀ 7)、吸引法で100%(9/9: ♂ 8 ♀ 1)であり、吸引法は性判別における細胞採取法として問題が無い(表1
2. ヒトIVFチップを用いた超急速ガラス化保存法(ヒトIVFチップ法):吸引法または切断法にて細胞採取・培養し、胚をVS20*で平衡後、ガラス化液(VS40**)とともにヒトIVFチップに吸引し超急速ガラス化保存を実施する。融解は3段階希釈により行い、3時間修復培養した後、ストローに詰め直して移植する。受胎率は吸引法で60%、切断法で50%、全体では57.1%である(表2)。
3. クライオトップを用いた超急速ガラス化保存法(クライオトップ法):吸引法または切断法にて細胞採取・培養し、胚をVS15***で平衡後、ガラス化液(VS30****)とともに胚をクライオトップにのせ、超急速ガラス化保存を実施する。ストロー内で直接加温・希釈した直接移植法による受胎率は、吸引法で50.0%(6/12)、切断法で37.5%(3/8)、全体では45.0%である。ディッシュを用いて加温・希釈し、培養後に移植した受胎率は吸引法で50.0%(1/2)、切断法で0%(0/2)、全体では25.0%(1/4)の受胎率である。細胞採取別の受胎率は、吸引法で50.0%、切断法で30.0%、全体では41.7%である(表2)。
4. 受胎率を細胞採取法別でまとめると、吸引法で52.6%、切断法で33.3%であり、有意差はないものの吸引法の受胎率が高い(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 吸引法が可能な胚のステージは初期胚盤胞までのため、採卵を現在の人工授精後7〜8日目から6.5〜7日目へ変更する必要がある。
2. ヒトIVFチップは段階希釈が必要であり現場移植への応用が難しいことから、クライオトップを用いた手法が良いと思われる。しかし、クライオトップ法の現場での融解・移植法が普及していないため、講習会を通じて技術普及を図る必要がある。

[具体的データ]

表1.細胞採取法の検討

表2.各保存法の溶液組成

表3.保存方法および細胞採取法別受胎率

[その他]
研究課題名:牛胚の雌雄判別のためのサンプル採取法と保存法の検討
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:林みち子、堀登、長井誠

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