パーコールを用いた後期桑実期から初期胚盤胞期におけるウシ胚の選別


[要約]
12%以上のパーコール画分に選別される発育ステージ後期桑実期から初期胚盤胞期のウシ体外受精胚はその後の発育が良い。

[キーワード]ウシ、後期桑実胚、初期胚盤胞、体外受精、パーコール

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
一般的に、ウシ胚の品質は顕微鏡下において形態学的に判断されているため、技術者の主観・熟練度による影響を受ける。客観的で簡易な胚の品質評価技術は受胎率の向上のために有効である。
 そこで、胚のパーコールへの沈降速度の違いを利用して、発育性の良いウシ胚を客観的に選別する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. パーコール液による胚の選別は、3mg/mlBSA(フラクションX)と0.5単位/mlヘパリンを含むDPBSで、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%(V/V)パーコール液を作成し、4穴ディッシュに900μlづつ入れ、培養7日目における発育ステージが後期桑実胚以降の体外受精胚を4%パーコール液表面に静置し、3分間放置後、沈降した胚を回収し、より濃いパーコール液で同様の操作を繰り返すことにより行う。選別した胚は、10%子牛血清を含む修正合成卵管液で、気層5%CO2、5%O2、培養温度39℃において培養し、72時間後の発育を測定する。
2. 発育ステージの進展に伴い、胚はパーコール濃度の低い画分に選別される傾向がある(表1)。
3. 12%以上のパーコール画分に選別される後期桑実期から初期胚盤胞期の胚は、10%以下に分画される胚に比べ、死滅するものが少なく、その後の発育の良いものが多い(図1)。
4. 凍結保存した場合も、パーコール濃度の高い画分に選別される後期桑実期から初期胚盤胞期の胚は、濃度の低い画分より融解後の生存性が高い傾向がある(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 技術者の熟練度等により、形態による胚の評価が難しい場合、当該技術を用いることにより、客観的で簡易に、発育性の良い後期桑実期から初期胚盤胞期の胚を選別できる。
2. 胚盤胞、拡張胚盤胞まで発育ステージが進んだ胚では、選別されるパーコール画分による発育に差はなく、当該技術は利用できない。
3. 本成績は、修正合成卵管液で発生培養した、母:黒毛和種および交雑種(黒毛和種×ホルスタイン種)、父:黒毛和種に由来する体外受精胚で得られており、ホルスタイン種等の胚に、この手法が有効であるかは明らかではない。

[具体的データ]
表1 体外胚の発育ステージと選別されるパーコール画分
図1 パーコールで選別した後期桑実期から初期胚盤胞期の胚の培養72時間後の生存性と発育ステージ
図2 パーコールで選別後に凍結保存した後期桑実期から初期胚盤胞期の胚の融解72時間後の生存性と発育ステージ
[その他]
研究課題名:受胎率向上に向けた牛受精卵の品質判定技術の確立試験 予算区分:県単
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:四ツ島賢二、沖村朋子、廣瀬富雄

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