少数胚培養におけるフィコール添加による胚盤胞期への発生率改善効果


[要約]
ウシ体外受精胚を少数培養する場合、発生培養液に高分子物質フィコールを添加することにより、胚盤胞期への発生率を改善できる。

[キーワード]ウシ、体外受精、少数胚培養、高分子物質、胚盤胞

[担当]富山畜研・酪農肉牛課
[代表連絡先]電話:076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
近年、生体および食肉処理場由来の卵子を用いた体外受精技術により、優秀な後継牛作出のための胚生産が行われている。血統登録可能な体外受精胚を生産するためには個体別の培養が必要であるが、1個体から採取できる卵子数が少ないため、体外成熟-体外受精-体外培養での胚盤胞期への発生率が低くなる傾向がある。この解決策として、発生培養液に高分子物質であるポリビニルピロリドン(PVP)を添加する方法があるが、PVPは粘性が高く取り扱いにくいため、安定した効果が得られない場合がある。
 そこで、PVPよりも操作性に優れた高分子物質であるフィコールを発生培養液に添加することで、胚盤胞期への発生率を改善することを目的とする。

[成果の内容・特徴]
1. 食肉処理場から採材した卵巣由来の未成熟卵子を用い、成熟培養はIVMD101(機能性ペプチド研)で22時間、体外受精はIVF100(機能性ペプチド研)で6時間媒精する。発生培養は媒精後24時間までIVMD101を用い、その後4日間は0.3%BSA添加m-SOF、媒精後5日目以降は10%CS添加m-SOFにより行う。
2. 集合培養と比較すると、1ドロップあたりの培養胚数が少ないほど、分割後早期に発生が停止する傾向にあり、胚盤胞発生率も低くなる(表1)。
3. 体外受精胚を1胚培養する場合、発生培養液に1%フィコー(PM400、MW400,000、SIGMA)を添加すると、無添加やPVP添加よりも胚盤胞発生率が高い傾向にある(表2)。
4. 発生培養液にフィコールを添加する際、1%までは濃度依存的に胚盤胞発生率が高くなるが、2%では発生が認められない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 採取卵子数が少ない場合の体外受精において、発生培養液へのフィコールの添加で胚盤胞発生率の改善が期待できる。
2. 本成果は、上記の培養条件で試験を行ったものである。異なる培養液や血清濃度を用いる場合は、事前のフィコール濃度の検討が必要である。
3. 本成果は、母:黒毛和種および交雑種(黒毛和種×ホルスタイン種)、父:黒毛和種に由来する体外受精胚で得られており、ホルスタイン種等の卵子や精液を用いる場合に、この手法が有効であるかは明らかではない。

[具体的データ]

表1  1培養ドロップあたりの培養胚数が胚盤胞発生率に及ぼす影響

表2 1胚培養への高分子物質添加が胚盤胞発生率に及ぼす影響 

表3 1胚培養へのフィコール添加濃度が胚盤胞発生率に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:牛生体卵子の体外受精による効率的受精卵生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:沖村朋子、四ッ島賢二、廣瀬富雄

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