納豆残さの給与は子豚の腸内細菌叢及び発育を改善する


[要約]
納豆のプロバイオティクス機能に注目し子豚(哺乳子豚又は離乳期子豚)の健康に及ぼす影響を調査したところ、10%納豆液は哺乳子豚の健康に良い影響を与えるが、乾燥粉末納豆は離乳期子豚の健康に対し有意な影響は与えない。

[キーワード]納豆、プロバイオティクス、子豚、腸内細菌

[担当]茨城畜セ・養豚研・飼養技術研究室
[代表連絡先]電話:029-892-2903
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年、食品偽装を始めとする食品の安全・安心の高まりや動物用医薬品や農薬などの残留基準をさらに高めたポジティブリスト制度の導入など、食品に対する消費者の関心は益々高まってきており、安全・安心な豚肉を消費者に提供するために抗菌性物質などの薬剤に頼らない生産技術が求められている。そのような中、抗菌性物質の代替としてプロバイオティクスが注目されている。その研究の中心は、ヨーグルト等に含まれる乳酸菌が主体であったが、茨城の特産物である納豆に含まれる納豆菌にも、乳酸菌やビフィズス菌を増加・安定化させる等の作用を介してプロバイオティクスとしての効果が明らかにされている。そこで納豆残さを利用し、子豚(哺乳子豚又は離乳期子豚)の腸内細菌叢及び発育を改善する。

[成果の内容・特徴]
1. 納豆液は納豆1に対し蒸留水9をミキサーにて混合して作る。納豆粉末は納豆を送風定温恒温器で50℃72時間乾燥させ、ミルサーで粉末処理する。
2. 投与方法は、哺乳子豚には生後1〜7日齢まで納豆液を1日1回、1ml/頭、注射器等を利用し飲ませ、対照区には注射器等を利用して蒸留水を飲ませる。離乳期子豚には3〜6週齢まで納豆粉末を1g/頭、飼料に振りかけて食べさせ、対照区には無投与とする。なお、哺乳期子豚用飼料にはアビラマイシン、硫酸コリスチン、クエン酸モランテルを、子豚用飼料にはクエン酸モランテル、硫酸コリスチン,ノシペプタイドを含有している。
3. 哺乳子豚に納豆液を投与すると、納豆投与を終了した1週齢以降、有意に良好な体重増加を示す(表1)。これは、図1のとおり納豆給与区でも生後約1週間までは下痢が観察されるが、それ以降は軟便や下痢の発生が少なくなり、その症状も軽く同腹内全体に波及しないことによると推定される(糞便スコアは糞便性状等により0〜4に区分:0、1を正常とする)。さらに、糞便中の細菌検査で(図2)、クロストリジウムに差は見られないが、大腸菌群数は4週齢で対照区と比較して納豆区が有意に少なくなり、乳酸菌数は2週齢では納豆区で有意に多くなる。以上のことから、哺乳子豚の細菌性下痢に納豆の投与は有効であると推定される。
4. 離乳期子豚に乾燥納豆を投与すると、下痢発生数は対照区が10腹86頭中3腹4頭(4.7%)、納豆区は10腹91頭中2腹3頭(3.3%)で、腹数、頭数ともに低い値となる。乳酸菌数と大腸菌群数は、区間で有意差はないものの,納豆区の乳酸菌数は6週齢、8週齢において若干多い傾向がみられ、大腸菌群数は逆に6週齢、8週齢で納豆区の方が若干少ない傾向がみられることから、離乳時の下痢多発農場では、納豆投与が細菌性下痢対策として有効であると推察される。

[成果の活用面・留意点]
1. 安全安心な豚肉を消費者に提供するためには、抗菌性物質などの薬剤に頼らない生産技術が求められていることから、子豚の下痢が多発する農場において、納豆の投与は有効であると推定される。

[具体的データ]
表1 体重の推移
図1下痢発生状況(哺乳子豚時に納豆液給与) 図2糞便1g中の細菌数の推移(哺乳子豚時に納豆液給与)
表2 乾燥粉末納豆給与離乳期子豚糞便中の細菌数
[その他]
研究課題名:納豆残さの添加が豚の健康に及ぼす影響
予算区分:県単
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:森田幹夫、坂代江、真原隆治
発表論文等:坂、(2008)ALL about SWINE、33:15-19

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