3元交雑種肥育豚への食品リサイクル飼料給与が発育および肉質に及ぼす影響


[要約]
発酵リキッド飼料による3元交雑種(WLD及びLYD)による肥育試験を実施。発育は良好で、厚脂、軟脂傾向も見られない。肉質は、においの要因であるスカトール含量も少なく、皮下脂肪中にはC18:1(オレイン酸)、C18:3(リノレン酸)が多い等の特徴がある。

[キーワード]発酵リキッド飼料、3元交雑種、脂肪酸組成

[担当]神奈川畜技セ・畜産工学部
[代表連絡先]電話:046-238-4056
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
食品残さを粉砕・加水・殺菌し乳酸発酵させる「発酵リキッド飼料」を用い、これまでの成果を活用して、デュロック種を止め雄とする異なる2種の3元交雑種肥育豚を用いて、発育性と肉質について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 発育調査成績
試験区の設定は表1の通りで1群4頭の群飼である。体重約30kgから試験を開始し、約110kg(105〜115kg)で出荷。1区では平均体重70kg以後は発酵リキッド飼料のみでは水分が多く十分な栄養を摂取できない可能性があるため市販配合飼料10%混合し、TDN、DCPの充足率を約120%(体重80kg、D.G 0.85kg)とする。1日あたり増体重は、50〜70kgでは1区が2区より良好で、70〜90kgにおいても1区と2区で大きな差は無く、1区も目標したDG850gを超えており概ね良好な発育である。一方、仕上げ期にあたる90kg〜110kgでは2区が1区を上回っている。各ステージとも試験区間に有意な差は認められない。飼料要求率は、1区が2区よりも有意に低かった(P<0.01)。(表2)。
2. 枝肉検査成績
1区は2区比べ枝肉歩留りが有意に高く(P<0.01)、中躯重量も有意に大きい(P<0.05)。背脂肪厚は1区は2区に比べ厚くなったが平均で23.7mmと取引規格で「上」と格付けされる値であった(表3)。
3. 肉質検査成績
肉質検査の結果、筋肉内脂肪、水分、ドリップロス、クッキングロス、シェアバリューの各項目で試験区による差は認められない。皮下内層脂肪の脂肪融点は、両試験区とも40℃を超えており、軟脂傾向は見られない(表3)。食肉の「におい」の成分の一つであるスカトールについてロース及びその周辺の脂肪を用いて定量した。その結果、発酵リキッド飼料給与の1区が配合飼料給与の2区に対して有意に高い(P<0.01)結果となった(表3)が、絶対値としては微量であり、発酵リキッド飼料給与に豚肉の臭いが強くなるとは言えない。脂肪酸組成では1区についてはC18:1(オレイン酸)、C18:3(リノレン酸)が2区より有意に多く(P<0.05)、C16:0が有意に少ない(P<0.05)(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. WLD、LYDと異なる2種の3元交雑種を供試したが品種による差はほとんどなく、主に飼料による差が見られる。3元交雑種肥育豚に発酵リキッド飼料を給与した場合、仕上げ期に課題は残るものの概ね発育性は良好で、肉質も配合飼料給与と差が無く、厚脂、軟脂の傾向も認められない。
2. 脂肪酸組成等で、飼料の違いによる特徴が認められており、生産豚肉の高品質、高付加価値化の可能性が示唆される。また、発酵リキッド飼料給与豚肉のスカトール含量は検出限界値(0.01ppm)に近く、懸念される臭いへの影響も少ないと考えられる。

[具体的データ]
表1 試験区設定と供試飼料
表2 生産性の比較
表3 枝肉・肉質検査成績
表4 脂肪酸組成
[その他]
研究課題名:食品リサイクル飼料を用いた低コスト・高品質豚肉生産システムの研究
予算区分:県単
研究期間:2008年度
研究担当者:山本禎、西田浩司

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