単為発生胚を利用したブタ胚の発生補助技術


[要約]
受胚ブタに移植された単為発生胚は、25〜30日齢まで発生し、死亡した後も遺残物として子宮内にとどまり、受胚ブタを偽妊娠状態にする。単為発生胚と同時移植した1個の受精胚は、高い確率で産子にまで発生できる。

[キーワード]ブタ、胚、単為発生胚、妊娠維持、偽妊娠、発生補助

[担当]静岡畜研中小・医療用実験豚プロジェクト研究スタッフ
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
ブタは妊娠初期の子宮内に数個の胚が存在しないと妊娠を継続できない。そのため、妊娠初期になんらかの理由で少数になってしまった胚は正常な胚であっても生存できなくなる。一方、単為発生胚はクローン胚作製のためのレシピエント卵子作製と同じ手順で作製することができ、体外培養での発生率も高い。
 本研究では、単為発生胚の同時移植が正常な少数ブタ胚の発生を補助できるかどうかについて検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 単為発生胚は、未成熟ブタの卵巣より採取した未成熟卵母細胞を体外で成熟培養し、電気刺激により活性化した後、110時間培養して作製する。受精胚は、未成熟ブタにeCGおよびhCG処理し、hCG投与30および36時間後に人工授精し、hCG投与134時間後に開腹手術により回収する。これらの胚を発情同期化した受胚ブタに移植する。
2. 単独で移植した単為発生胚の39.3%は、胎齢25〜30日まではおもに胎子として、それ以降は、胎子遺残物として子宮内に存在する(表1)。
3. 単為発生胚を移植した受胚ブタの殆どは、発情発現が抑制される。この際、子宮は粘膜が著しい水腫状態になるが、黄体組織および黄体ホルモンの動態は妊娠ブタのものと変わらず、偽妊娠状態となる。
4. 受精胚1個のみを移植した9頭の受胚ブタのうち、7頭は30日以内に発情を回帰する一方で、1個の受精胚と単為発生胚18〜24個(平均21.6 ± 0.9個)を同時移植した9頭の受胚ブタのうち7頭(77.8%)は、正常な受精胚由来の産子をそれぞれ1頭分娩することができる(表2)。
5. 単為発生胚の同時移植は、少数ブタ胚の発生を補助することが判明し、1個の受精胚でも高い確率で産子にまで発生することができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 凍結受精胚、クローン胚、遺伝子組換え胚などの発生率の低いブタ胚の発生を補助する手段として応用できる。
2. 単為発生胚が死滅した50日齢で妊娠診断を行い、ねらいとする胚が生存しているかどうかを確認する。
3. 不受胎にもかかわらず黄体が存続して偽妊娠状態になった雌ブタは、PGF2αを投与すると、4〜5日後に発情を発現する。

[具体的データ]
表1 単為発生胚の発生と受胚ブタの黄体保有状況
表2 単為発生胚と受精胚の同時移植
[その他]
研究課題名:体細胞クローン技術による優良種豚の有効活用
予算区分:県単
研究期間:2008〜2012年度
研究担当者:河原崎達雄、塩谷聡子、大津雪子
発表論文等:Kawarasaki T. et al. (2009) Anim. Reprod. Sci. 112(1-2): 8-21

目次へ戻る