DNA多型を利用した三元交雑豚の銘柄鑑別技術


[要約]
フジヨークに特異的なmtDNAを持ったF1母豚および、金華豚由来の毛色関係遺伝子(MC1R遺伝子)をもった止め雄豚から生産された三元交雑豚は銘柄鑑別が可能となる。

[キーワード]三元交雑豚、ミトコンドリアDNA、MC1R遺伝子、PCR-RFLP法

[担当]静岡畜研中小・養豚研究スタッフ
[代表連絡先]電話:0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
静岡型銘柄豚は、フジヨークの雌にランドレースの雄を交配したWLのF1雌に、フジロックの雄を交配した三元交雑豚を銘柄として認定している。静岡型銘柄豚であることを証明するため、フジヨークに特異的なミトコンドリアDNA(mtDNA)塩基配列を検索し、選抜育種と同時にすべての個体のmtDNAが特徴的なハプロタイプになるように斉一化をしている。一方、金華豚とデュロック種の交雑家系において、マーカーアシスト導入法によって金華豚由来の毛色関係遺伝子(MC1R遺伝子)をもった止め雄豚を作出した。
 これらのブタを活用した三元交雑豚を作成し、母系はmtDNA,止め雄はMC1R遺伝子を検索することによる銘柄鑑別の可否とその産肉性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. フジヨークに特徴的な配列のmtDNAをもつ大ヨークシャー種の雌にランドレースの精液を人工授精して得られた産子を種雌豚として試験に供する。一方、金華豚とデュロック種のF1に、デュロック種を戻し親とする3回の戻し交配を行なうと同時に、PCR-RFLP法により金華豚のMC1R遺伝子をデュロック種に導入する。この遺伝子を導入した戻し交配第3世代豚同士を交配し、MC1R遺伝について金華豚型のホモの個体を作出し、止め雄として試験に供する。
2. 上記の種豚から生産された交雑豚(試験交雑豚)の発育およびと体形質を通常の三元交雑豚であるWLDと比較した結果、出荷日齢、1日当たり増体量およびと体形質に有意な差は認められなかった(表1)。
3. 試験交雑豚2腹20頭および市販の豚肉5銘柄45検体を供試し、表2に示すプライマーおよび制限酵素によりPCR-RFLP法を行うと、mtDNA、MC1R遺伝子ともに試験交雑豚と同様のパターンを示す検体は観察されず(表3)、銘柄レベルでの鑑別が可能となる。

[成果の活用面・留意点]
1. フジヨークに特異的なmtDNAを持ったF1母豚および金華豚由来の毛色関係遺伝子(MC1R遺伝子)をもった止め雄豚を使うことにより三元交雑豚の銘柄鑑別が可能となる。
2. DNAマーカーアシスト導入法により実用規模の種豚群を作製するには多大な労力と費用が必要となる。

[具体的データ]
表1 試験交雑豚とWLDの発育およびと体形質
表2 使用プライマーおよび制限酵素
表3 PCR-RFLP法検査結果
[その他]
研究課題名:新静岡型銘柄豚トレーサビリティの確立
予算区分:県単
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:柴田昌利、知久幹夫、堀内篤
発表論文等:静岡県畜産技術研究所中小家畜研究センター研究報告 第3号

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