飼料作物生産圃場におけるニホンジカ食害に対するソルガムの有効性


[要約]
ソルガムは飼料用トウモロコシに比べ、生育初期のニホンジカ食害による減収被害を受けにくく、食害多発圃場における食害対策作物として有望である。

[キーワード]シカ、食害、ソルガム、青酸、耕作放棄地

[担当]長野畜試・飼料環境部、長野農試・企画経営部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
輸入飼料価格の高騰により、飼料自給率の向上が求められている。飼料作物は中山間地域の耕作放棄地を利用した生産も多く、ニホンジカやイノシシ等の野生鳥獣による被害が問題となっている。
 経験的にトウモロコシよりソルガムはニホンジカ、イノシシ等の野生鳥獣の被害を受けにくいといわれており、トウモロコシに壊滅的な被害を与えるニホンジカの食害について、ソルガムの有効性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 1. ニホンジカによるソルガムの食害は、茎葉の青酸含量(図1)が、家畜に対する危険濃度(750ppm)以下なる播種後30日前後(6〜7葉期頃)から見られるようになる(表1)。
2. ソルガムのニホンジカによる食害は、ほぼ生育前半(播種後30〜50日)に限られる(表1)。
3. ニホンジカは、ソルガムよりトウモロコシを好む傾向が強く、トウモロコシの場合、地際まで食害し、葉を1枚も残さない場合が多いが、ソルガムは葉を1枚以上残すので、その後の生育が有利となる(図3)。トウモロコシ、ソルガムとも、6葉完全展開期に、葉を完全摘葉すると、無処理の場合に比べ、生収量は40〜50%減少するが、1葉だけ残した場合は、20%程度の減収にとどまる(図2)。
4. 以上より、ニホンジカの食害を受ける圃場では、ソルガムを栽培することによって、被害をある程度回避でき、大幅な減収を防ぐことができる。

[成果の活用面・留意点]
1. ニホンジカの食害が多発する地域において、飼料作物の食害対策に活用できる。
2. 子実型のソルガムは収穫期に子実を食害される可能性があるので、利用は避けること。
3. 被害の軽減効果は、ニホンジカの生息密度によって変化する可能性がある。

[具体的データ]
図1 ソルガム茎葉乾物中の青酸濃度 図2 摘葉処理が草丈及び生収量に及ぼす影響
表1 ニホンジカ食害がソルガムに与える影響
図3 作物の種類とニホンジカ食害による被害の違い
[その他]
研究課題名:国産バイマス燃料への利用に向けた資源作物の育成と低コスト栽培技術の開発
予算区分:バイオマスプロ
研究課題名:自給飼料作物の品質、飼料価値に影響する品種特性及び栽培利用条件の解明
予算区分:県単素材開発研究
研究期間:2008〜2009年度
研究担当者:矢口直輝、後藤和美、清沢敦志、太田俊明、桜井多美子(長野農試)、菅沢勉(長野農試)

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