モモ園への家畜ふん堆肥施用におけるリン酸・カリ低減型肥料の利用技術


[要約]
リン酸・カリ低減型肥料を主体に牛ふん堆肥と鶏ふんをあわせてモモ園に施用すれば、化学肥料由来の窒素比率を25%と低く抑え、土壌中のリン酸、カリ蓄積を伴わずに慣行施肥と同等の果実が生産出来る。

[キーワード]モモ、牛ふん堆肥、鶏ふん、リン酸、カリ

[担当]山梨果樹試・環境部
[代表連絡先]電話:0553-22-1921
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
モモ園の環境保全型農業を実現するために、化学肥料の使用量を低減し家畜ふん堆肥を施用する技術が求められている。しかし、家畜ふん堆肥はリン酸・カリを多く含む等の問題がある。そこで、リン酸・カリ低減型肥料(以下、エコ肥料)を試作し、牛ふん堆肥・鶏ふんとあわせて施用法について実用性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 家畜ふんを大量に連年施肥すると、連用期間の経過とともに牛ふん堆肥では土壌中の交換性カリ含量と可給態リン酸含量が、鶏ふんでは土壌中の可給態リン酸含量がそれぞれ増加した(図1)。家畜ふん施用量を安易に増やすとリン酸・カリの土壌蓄積が問題となる。
2. モモ用エコ肥料(窒素8%−リン酸2%−カリ3%、重量比で魚カス等窒素を含む有機物69%、尿素等窒素を含む無機物11%)は、リン酸・カリ含量が低く、化学肥料由来の窒素比率も34.5%と低い。
3. エコ肥料を主体とし、牛ふん堆肥1t/10aと鶏ふん80kg/10aをあわせると、全資材中の化学肥料由来の窒素比率は25%と低く抑えられた。これをモモ園に施用すると、土壌へのリン酸、カリ蓄積を伴わずに慣行施肥と同等の果実品質、収量、樹勢が得られた(表1)。
4. 土壌条件や品種が変わっても、エコ肥料主体の施肥により慣行施肥と同等の果実品質が得られた(表2)。本施肥はモモ園で広く実施出来る。

[成果の活用面・留意点]
1. 化学肥料由来の窒素比率が低く、家畜ふん堆肥のモモ園への適正な施用方法が明らかとなり、環境保全型農業への取り組みが進む。
2. エコ肥料を主体とした施用量(10aあたり)は、施肥指導基準に対応するように、 早生種:エコ肥料100kg+牛ふん堆肥1t+鶏ふん80kg(窒素12kg-リン酸8kg-カリ10kg) 中晩生種:エコ肥料120kg+牛ふん堆肥1t+鶏ふん100kg(同14kg-10kg-12kg)とする。
3. エコ肥料を主体とした施肥により慣行施肥にくらべ肥料費を22%削減できる(白鳳有 袋栽培)。

[具体的データ]
図1 家畜ふん施用による土壌中のリン酸、カリ蓄積
表1 エコ肥料施用による果実品質、土壌化学性への影響
表2 主要品種における現地試験結果(各2園の平均値、2008)
[その他]
研究課題名:果樹園における資源循環型肥培管理法の確立
予算区分:県単
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:古屋 栄、手塚誉裕、内藤一孝

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