リンゴ「ふじ」単植園における受粉専用品種の混植方法


[要約]
わい化栽培のリンゴ「ふじ」単植園において、訪花昆虫としてマメコバチを利用した場合、受粉樹として受粉専用品種を15〜20m程度の間隔で植栽することで、園地全体の頂芽中心果80%程度以上の結実が確保できる。

[キーワード]ふじ、単植園、受粉専用品種、混植、受粉樹

[担当]長野果樹試・育種部
[代表連絡先]電話:026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
現在、長野県内の「ふじ」の栽培面積は、リンゴ全体の6割程度を占めており、「ふじ」の単植園も多く見受けられる。「ふじ」の単植化や「ふじ」に対する受粉樹不足は、結実が不安定となることが多く、クラブアップル等の受粉専用品種を用いた単植化技術の開発が望まれている。そこで、マメコバチを放飼したわい化栽培「ふじ」単植園において、赤葉遺伝子を持つ「メイポール」が赤葉実生を発現することを指標として、受粉樹の花粉伝搬の実態を明らかにするとともに、「ふじ」単植園における受粉専用品種の適正な混植方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 調査指標である赤葉発生比率は、受粉樹からの距離が10m程度まで急激に減少する傾向を示す(図1)。S遺伝子解析により、「メイポール」の花粉で結実したと推定される果実の比率も同様の傾向を示す(データ省略)。
2. 赤葉発生比率と「メイポール」由来果実との関係から、赤葉発生比率を受粉専用品種「メイポール」を導入した「ふじ」単植園の推定結実率と仮定し、花粉伝搬モデル及び結実率モデルを検討した。受粉樹として受粉専用品種「メイポール」を15〜20m程度の間隔(受粉樹からの最大距離7.5〜10m)で植栽すると、頂芽中心果80%程度以上の結実が確保される(図2)。
3. 「ドルゴ」、「メイポール」、「ネヴィル・コープマン」、「スノードリフト」の開花期は、「ふじ」の頂芽花満開期と重複するため、「ふじ」の受粉樹として利用できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 受粉専用品種は、現在「ドルゴ」、「メイポール」、「ネヴィル・コープマン」、「スノードリフト」が市販されている。導入にあたっては、各地域において「ふじ」の開花期との適合性を検討する。
2. マメコバチは、巣箱1ヶ所に500〜800匹の個体数を目安とし、80a単位で導入する。なお、本技術はマメコバチを放飼して得られた結果であるので、ミツバチを利用した場合は異なる結果となることが予想される。
3. 頂芽中心果が80%程度結実すると、花芽着生率(開花率)を60%とした場合、概ね2頂芽に1果の割合で中心果が結実していることになり、最終的な着果量の2倍程度の中心果が確保できることになる。

[具体的データ]
図1 受粉専用品種「メイポール」から距離別に採取した「ふじ」の自然ん交雑実生の赤葉発生比率(2004〜2006年)

図2 リンゴ「ふじ」わい化栽培園における受粉専用品種の栽植例
図3 受粉樹からの距離と結実率モデル(2006年)
図4 受粉専用品種の開花期(2008年)
[その他]
研究課題名:リンゴ品種の単植化に向けた新しい結実安定技術の開発
予算区分:実用技術開発
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:前島勤、小松宏光、木原宏

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