黒ボク土ナシ園における基肥窒素の豚ぷん堆肥による代替技術


[要約]
黒ボク土ナシ園において、基肥を豚ぷん堆肥で代替した施肥法は、化学肥料由来の窒素施肥量を5割削減でき、基準施肥および農家慣行の施肥法と比較して生育・収量・果実品質は同等に維持できる。

[キーワード]ニホンナシ、化学肥料代替技術、窒素減肥、豚ぷん堆肥、黒ボク土

[担当]茨城農総セ園研・土壌肥料研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8340
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
近年肥料価格が高騰しており、肥料費は経営費の約10%程度を占めていることから、ナシ生産者に大きな影響を及ぼしている。
 一方で、茨城県内生産者の施肥実態調査によるとナシ栽培において10aあたり2トン程度の家畜ふん堆肥(以下堆肥)が連用されている。堆肥施用は土壌腐植の維持に重要な役割を果たしているが、窒素をはじめとする肥料成分は施肥設計に反映されていない。
 そこで、年間の窒素施肥量の5割を占める基肥を豚ぷん堆肥で代替し、化学肥料に由来する窒素施肥量の5割減肥を目的とする。

[成果の内容・特徴]
1. この堆肥施用法(堆肥代替区)は、年間の窒素施肥量の5割を占める基肥について、豚ぷん堆肥に含有する窒素で代替する技術である。すなわち、この堆肥施用法は、本県の黒ボク土における施肥基準量を化学肥料で施用した施肥基準区、および施肥基準量の化学肥料に加えて堆肥を施用した農家慣行区と比較して、化学肥料に由来する窒素施肥量を5割削減できる(図1)。
2. この堆肥施用法は、堆肥の肥効率を考慮せず、全窒素含量で施用量を決定する。毎年一定量の堆肥を施用した場合には、1年間に無機化する窒素量は(1)式で表すことができる(出井、1975)。豚ぷん堆肥の一般的な肥効率50%の場合、連用4年目には当年に施用した堆肥中全窒素の94%が見かけ上無機化する。
D=Q{1-(1-x)n}…(1) D:1年間に分解する有機物量 Q:毎年の有機物施用量 
 x:有機物の分解率 n:経過年数 
3. この堆肥施用法は、施肥基準区および農家慣行区と比較して、生育・収量・果実品質は同等である(表1)。
4. この堆肥施用法は、土壌深さ20cmにおける土壌溶液のNO3-N濃度が5年間の平均値で6.9mg/Lであり、施肥基準区の6.7mg/Lと同等で変動時期にも大きな相違は認められないことから、生育に十分な窒素の肥効を示すと考えられる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. この堆肥施用法は、黒ボク土で堆肥を4年以上連用しているニホンナシ「幸水」栽培圃場に適用し、使用する堆肥は内容成分の明らかな豚ぷん堆肥とする。
2. この堆肥施用法は窒素成分のみを対象としており、窒素以外の肥料成分については堆肥中の肥料成分量、土壌診断結果および施肥基準を考慮して適切に行う。
3. 茨城県内の主要な豚ぷん堆肥は、平均価格(バラ積み)が約3000円/tであり、窒素成分1kgあたりに換算すると約250円である。

[具体的データ]
図1 年間の形態別の窒素施用量
表1 基肥の堆肥代替が、生育・収量・果実品質に及ぼす影響(2004〜2008年の平均値)
図2 土壌深さ20cmにおける土壌溶液硝酸態窒素濃度の推移
[その他]
研究課題名:高樹齢ナシ園における堆肥の環境保全的施用技術の確立・実証
予算区分:県単
研究期間:2004〜2008年度
研究担当者:藤田裕、清水明、多比良和生、植田稔宏

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