ハウスミカン早期加温栽培でのオーキシン活性薬剤処理が結果母枝に及ぼす影響


[要約]
ハウスミカンの夏芽母枝へ1−ナフタレン酢酸ナトリウムを散布した場合、エチクロゼート散布に比べ結果母枝中のデンプン蓄積が多く硝酸態窒素含量の低下が早い。また、結果母枝の断面は円形に近く、加温後の着花は有葉花の割合が高い。

[キーワード]ハウスミカン、1−ナフタレン酢酸ナトリウム、エチクロゼート、着花

[担当]愛知農総試・園芸研究部・常緑果樹グループ
[代表連絡先]電話:0533-68-3381
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
夏芽に由来する結果母枝を利用したハウスミカンの早期加温栽培は、着花確保のため結果母枝からの再発芽を防止することが必要である。そこで、再発芽防止効果のあるオーキシン活性薬剤の違いが結果母枝の栄養状態および加温後の発芽・着花に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 7月上中旬にせん定を行うハウスミカンにおいて、結果母枝からの夏秋梢伸長抑制のため萌芽時に1−ナフタレン酢酸ナトリウム(以下、NAA)220ppmを2回散布した場合、エチクロゼート100ppmを2回散布した場合に比べ結果母枝中のデンプンの蓄積が多く、硝酸態窒素含量の低下が早い(図1)。
2. 加温前の結果母枝の形質を比較すると、NAAを散布した枝はエチクロゼートを散布した枝に比べ基部径が太く、断面の形状が円形に近い(表1)。
3. 加温後の着花は、NAA散布樹とエチクロゼート散布樹で総花数が同等であるが、NAA散布樹は有葉花の割合が高く、エチクロゼート散布樹は直花主体となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 加温適期の判定に結果母枝中のデンプン簡易定量値や硝酸態窒素定量値を利用する場合、夏秋梢伸長抑制にNAAを使用すると、従来の登録薬剤であるエチクロゼートと比べデンプン含量数値が高く、硝酸態窒素含量数値が低くなるため加温適期判定結果が早くなる可能性が高い。使用薬剤を変更した場合には、これらの定量値のみによらず挿し枝等他の手法を併用するなど加温適期判定を慎重に行う必要がある。
2. NAA22%水溶剤は2009年6月に農薬登録となった。使用目的は「全摘果」「間引き摘果」「夏秋梢伸長抑制」である。

[具体的データ]
図1 結果母枝中のデンプン含量および硝酸態窒素含量の推移
表1 加温2日前の結果母枝の形質
 表2 加温30日後の発芽・着花状況
[その他]
研究課題名:ハウスミカンの早期加温栽培における着花安定技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2009年度
研究担当者:本美善央、杉原巧祐、市川啓

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